「ダークナイト」日曜洋画劇場版・日本語吹き替えを考察する [吹き替えについて]
テレ朝の「日曜洋画劇場」にて、遂に地上波初放送となった「ダークナイト」。
皆さんはご覧になられましたでしょうか?。地上波放送の宿命でところどころシーンがカットされたのは残念でしたが、それでも全体的にはまずまずだったのではないでしょうか?。
さて、今回の放送では「日曜洋画劇場」オリジナルの日本語吹き替え版が制作されました。
吹き替えファンとしては、DVD版吹き替えとの違いを楽しめる絶好の機会です。
その出来は果たしてどうだったでしょうか?。
「ダークナイト」日曜洋画劇場版日本語吹き替えキャスト
吹き替え用台本翻訳:久保喜昭 演出:鍛冶谷功
クリスチャン・ベール(ブルース・ウェイン/バットマン) ....藤真秀◯
ヒース・レジャー(ジョーカー) ....大塚芳忠△
アーロン・エッカート(ハーヴィー・デント/トゥーフェイス)....井上和彦△
マギー・ギレンホール(レイチェル・ドーズ) ....岡寛恵△
マイケル・ケイン(執事アルフレッド) ....糸博◯
ゲイリー・オールドマン(ゴードン本部長) ....立木文彦△
モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス) ....坂口芳貞◎
ネスター・カーポネル(ガルシア市長) ....江原正士◯
エリック・ロバーツ(サルバトーレ・マローニ) ....佐々木勝彦◯
リッチー・コスター(チェチェン) ....斎藤志郎◯
キリアン・マーフィ(ジョナサン・クレイン/スケアクロウ) ....諏訪部順一×
ジョシュア・ハート(コールマン・リース) ....村治学◯
アンソニー・マイケル・ホール(マイク・エンゲル) ....内田直哉×
モニーク・ガブリエラ・カーネン(ラミレス刑事) ....東條加那子◯
ロン・ディーン(ワーツ刑事) ....楠見尚己◯
他
※配役はウィキペディアを参考にさせて頂きました
氏名のあとにある◯、△、×、はお芝居から受けた個人的な印象です
先日の「インセプション」に引き続き、非常に豪華な配役陣です。
ジョーカー=大塚芳忠さんの読みは見事に的中!、でも残念ながらトゥーフェイス=大塚明夫さんの読みは見事に外れてしまいました(^皿^;)。今回大ファンでもある大塚芳忠さんがジョーカーを演じられるということで、果たしてベテラン大塚芳忠さんがこのジョーカーという役どころをどんな風に料理するのか?、非常に注目して作品を見ていた訳ですが、結論から言うと非常に“残念な出来”となっていました。その件に関しては後述するとしまして、まずは全体的な印象からいきます。
【藤真秀さん】
「タイタンの戦い」でのペルセウス(サム・ワーシントン)の声が実にぴったりだった藤真秀さん。今作でもブルース・ウェインの正義感溢れる声を熱演されていましたが、全体的にはやや力みすぎだった印象を受けました。例えば、ブルース・ウェインとバットマンの演じ分けが今ひとつだったし、もっと言えばブルース・ウェインの外の顔(大富豪の御曹司でプレイボーイ)の部分と内の顔(アルフレッドやルーシャスと接する時に見せる地の顔)の演じ分けがそれほど明確でなかった点が残念でした。
【井上和彦さん】
ハーヴィー・デントを演じられたのは、こちらもベテランの井上和彦さん。「日曜洋画劇場」では「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムの声でお馴染みですが、その声からイメージされるように正義感溢れるデントを実に好演されていました。ですが、デントが暗黒面に堕ちてトゥーフェイスになってからの声にはやや迫力不足を感じてしまいました。例えば、初めてトゥーフェイスがその顔を見せる場面での台詞「いいや、身に染みてないぞ、まだな!」の凄み感が今ひとつだったし、クライマックスでのバットマン、ゴードンとの三つ巴場面でも、デントの悲しみや怒りの感情の表現が今一歩の印象を受けました。もっと凄みを帯びたトゥーフェイスを見せて欲しかったです。
【岡寛恵さん】
「スパイダーマン」でのメリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)の声が抜群!だった岡寛恵さん。もちろん今作でもお芝居は抜群に巧かったのですが、ひとつだけ気になった部分がありました。それはレイチェルの地方検事という職業カラーの側面が、今イチ伝わってこなかった点です。犯罪が蔓延するゴッサムシティで検事を務めるということが一体どういうことなのか?、そういう部分をもっと台詞に乗せて欲しかったです。
【立木文彦さん】
まず第一にゴードン本部長の声に立木文彦さんの声は若すぎ!、そしてかっこ良すぎです!。画面上のゲイリー・オールドマンの渋さと立木さんの声が全然マッチしてなくて違和感大でした。大体立木文彦さんの声からすると、演じるのはゴードン本部長よりもむしろ黒人マフィアのギャンボルかフェリーの場面で出てく黒人犯罪者の方だと想うんだけど....。
いずれにしても、立木文彦さんに問題があるという訳でありません。単にキャスティングミスということに尽きます。
【坂口芳貞さん】
今回の吹き替えで唯一のハマリを見せるのが、ルーシャス・フォックスを演じる坂口芳貞さん。他の作品でもモーガン・フリーマンの声を数多く演じていらっしゃるだけあって、今作でもそのお芝居は盤石。今作で一番安心してみられた配役でした。
【糸博さん】
ベテラン糸博さんが、品のある執事アルフレッドを好演。こちらも安定感抜群。
他にもガルシア市長を演じた江原正士さんやサルバトーレ・マローニを演じた佐々木勝彦さん、コールマン・リースを演じた村治学さんなどは、いつも通りの安定感でした。
そして、
今作の吹き替えで強烈にダメだった人は、以下のお2人です
ダメだった人その1....スケアクロウを演じた諏訪部順一さん。
麻薬の取引現場に現れたスケアクロウ。そこへバットマンが現れるも、偽物だと判明した時に発せられるスケアクロウの台詞〜「本物じゃない!」の、なんと間延びした緊張感のないことか!。こんな能天気な台詞をいう役者も信じられないが、それにOKテイクを出す演出家も信じられない。スケアクロウことジョナサン・クレインにとって、バットマンは恐怖の対象であり、同時に憎むべき存在である。現れたバットマンが偽物だとわかってホッと安堵する気持ちと、本物じゃなかったことに対するある種の失望感(復讐の機会を伺っている)とが入り交じった、複雑な感情があのひと言には込められているのです。にも関わらず、まったく緊張感のない台詞に、思わず毒ガスを噴射してやりたくなりました!。
ダメだった人その2....内田直哉さん。
オイラは内田直哉さんのこと結構大好きなんですが、今作ではダメダメでした。
一番の理由はゴッサムテレビのマイク・エンゲルがジョーカーに拉致されて、その声明文を読まされる場面でのお芝居について。なぜ、あんなに普通な感じで原稿が読めるのでしょうか?....状況を考えたらお芝居として絶対におかしい。考えても見て欲しい、これ以前のシーンで偽バットマンことブライアン・ダグラスが同じような目にあってジョーカーに殺害されています。当然マスコミであるマイク・エンゲルはそのことを知っているはずだし、となれば自身も声明文を読み終えた時点でジョーカーに殺されるかもしれないという恐怖感があるはずです。そんな緊張感の中で原稿を読んだらどうなるか、当然声も震えるだろうし、文章を噛んでしまうかもしれません。しかし、そんなこともなく淡々と原稿を読むエンゲルの姿は、お芝居として完全に間違っていたとしか思えません。
そして、これまたそれにOKテイクを出す演出家が信じられません。
諏訪部順一さんや内田直哉さんに限らず、今回の日曜洋画劇場版の吹き替えには「それって演出として正しいの?」と感じる場面がたびたびありました。その印象が一番顕著だったのが、誰あろう大塚芳忠さん演じるジョーカーだったのです。
次回は、その大塚芳忠版ジョーカーについてオイラが感じたことを率直に語ります!。
「本物じゃないッ!」
諏訪部順一さんによるスケアクロウ吹き替えの、
あまりのダメっぷりにこう叫びたくなりました....
皆さんはご覧になられましたでしょうか?。地上波放送の宿命でところどころシーンがカットされたのは残念でしたが、それでも全体的にはまずまずだったのではないでしょうか?。
さて、今回の放送では「日曜洋画劇場」オリジナルの日本語吹き替え版が制作されました。
吹き替えファンとしては、DVD版吹き替えとの違いを楽しめる絶好の機会です。
その出来は果たしてどうだったでしょうか?。
「ダークナイト」日曜洋画劇場版日本語吹き替えキャスト
吹き替え用台本翻訳:久保喜昭 演出:鍛冶谷功
クリスチャン・ベール(ブルース・ウェイン/バットマン) ....藤真秀◯
ヒース・レジャー(ジョーカー) ....大塚芳忠△
アーロン・エッカート(ハーヴィー・デント/トゥーフェイス)....井上和彦△
マギー・ギレンホール(レイチェル・ドーズ) ....岡寛恵△
マイケル・ケイン(執事アルフレッド) ....糸博◯
ゲイリー・オールドマン(ゴードン本部長) ....立木文彦△
モーガン・フリーマン(ルーシャス・フォックス) ....坂口芳貞◎
ネスター・カーポネル(ガルシア市長) ....江原正士◯
エリック・ロバーツ(サルバトーレ・マローニ) ....佐々木勝彦◯
リッチー・コスター(チェチェン) ....斎藤志郎◯
キリアン・マーフィ(ジョナサン・クレイン/スケアクロウ) ....諏訪部順一×
ジョシュア・ハート(コールマン・リース) ....村治学◯
アンソニー・マイケル・ホール(マイク・エンゲル) ....内田直哉×
モニーク・ガブリエラ・カーネン(ラミレス刑事) ....東條加那子◯
ロン・ディーン(ワーツ刑事) ....楠見尚己◯
他
※配役はウィキペディアを参考にさせて頂きました
氏名のあとにある◯、△、×、はお芝居から受けた個人的な印象です
先日の「インセプション」に引き続き、非常に豪華な配役陣です。
ジョーカー=大塚芳忠さんの読みは見事に的中!、でも残念ながらトゥーフェイス=大塚明夫さんの読みは見事に外れてしまいました(^皿^;)。今回大ファンでもある大塚芳忠さんがジョーカーを演じられるということで、果たしてベテラン大塚芳忠さんがこのジョーカーという役どころをどんな風に料理するのか?、非常に注目して作品を見ていた訳ですが、結論から言うと非常に“残念な出来”となっていました。その件に関しては後述するとしまして、まずは全体的な印象からいきます。
【藤真秀さん】
「タイタンの戦い」でのペルセウス(サム・ワーシントン)の声が実にぴったりだった藤真秀さん。今作でもブルース・ウェインの正義感溢れる声を熱演されていましたが、全体的にはやや力みすぎだった印象を受けました。例えば、ブルース・ウェインとバットマンの演じ分けが今ひとつだったし、もっと言えばブルース・ウェインの外の顔(大富豪の御曹司でプレイボーイ)の部分と内の顔(アルフレッドやルーシャスと接する時に見せる地の顔)の演じ分けがそれほど明確でなかった点が残念でした。
【井上和彦さん】
ハーヴィー・デントを演じられたのは、こちらもベテランの井上和彦さん。「日曜洋画劇場」では「トランスポーター」のジェイソン・ステイサムの声でお馴染みですが、その声からイメージされるように正義感溢れるデントを実に好演されていました。ですが、デントが暗黒面に堕ちてトゥーフェイスになってからの声にはやや迫力不足を感じてしまいました。例えば、初めてトゥーフェイスがその顔を見せる場面での台詞「いいや、身に染みてないぞ、まだな!」の凄み感が今ひとつだったし、クライマックスでのバットマン、ゴードンとの三つ巴場面でも、デントの悲しみや怒りの感情の表現が今一歩の印象を受けました。もっと凄みを帯びたトゥーフェイスを見せて欲しかったです。
【岡寛恵さん】
「スパイダーマン」でのメリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)の声が抜群!だった岡寛恵さん。もちろん今作でもお芝居は抜群に巧かったのですが、ひとつだけ気になった部分がありました。それはレイチェルの地方検事という職業カラーの側面が、今イチ伝わってこなかった点です。犯罪が蔓延するゴッサムシティで検事を務めるということが一体どういうことなのか?、そういう部分をもっと台詞に乗せて欲しかったです。
【立木文彦さん】
まず第一にゴードン本部長の声に立木文彦さんの声は若すぎ!、そしてかっこ良すぎです!。画面上のゲイリー・オールドマンの渋さと立木さんの声が全然マッチしてなくて違和感大でした。大体立木文彦さんの声からすると、演じるのはゴードン本部長よりもむしろ黒人マフィアのギャンボルかフェリーの場面で出てく黒人犯罪者の方だと想うんだけど....。
いずれにしても、立木文彦さんに問題があるという訳でありません。単にキャスティングミスということに尽きます。
【坂口芳貞さん】
今回の吹き替えで唯一のハマリを見せるのが、ルーシャス・フォックスを演じる坂口芳貞さん。他の作品でもモーガン・フリーマンの声を数多く演じていらっしゃるだけあって、今作でもそのお芝居は盤石。今作で一番安心してみられた配役でした。
【糸博さん】
ベテラン糸博さんが、品のある執事アルフレッドを好演。こちらも安定感抜群。
他にもガルシア市長を演じた江原正士さんやサルバトーレ・マローニを演じた佐々木勝彦さん、コールマン・リースを演じた村治学さんなどは、いつも通りの安定感でした。
そして、
今作の吹き替えで強烈にダメだった人は、以下のお2人です
ダメだった人その1....スケアクロウを演じた諏訪部順一さん。
麻薬の取引現場に現れたスケアクロウ。そこへバットマンが現れるも、偽物だと判明した時に発せられるスケアクロウの台詞〜「本物じゃない!」の、なんと間延びした緊張感のないことか!。こんな能天気な台詞をいう役者も信じられないが、それにOKテイクを出す演出家も信じられない。スケアクロウことジョナサン・クレインにとって、バットマンは恐怖の対象であり、同時に憎むべき存在である。現れたバットマンが偽物だとわかってホッと安堵する気持ちと、本物じゃなかったことに対するある種の失望感(復讐の機会を伺っている)とが入り交じった、複雑な感情があのひと言には込められているのです。にも関わらず、まったく緊張感のない台詞に、思わず毒ガスを噴射してやりたくなりました!。
ダメだった人その2....内田直哉さん。
オイラは内田直哉さんのこと結構大好きなんですが、今作ではダメダメでした。
一番の理由はゴッサムテレビのマイク・エンゲルがジョーカーに拉致されて、その声明文を読まされる場面でのお芝居について。なぜ、あんなに普通な感じで原稿が読めるのでしょうか?....状況を考えたらお芝居として絶対におかしい。考えても見て欲しい、これ以前のシーンで偽バットマンことブライアン・ダグラスが同じような目にあってジョーカーに殺害されています。当然マスコミであるマイク・エンゲルはそのことを知っているはずだし、となれば自身も声明文を読み終えた時点でジョーカーに殺されるかもしれないという恐怖感があるはずです。そんな緊張感の中で原稿を読んだらどうなるか、当然声も震えるだろうし、文章を噛んでしまうかもしれません。しかし、そんなこともなく淡々と原稿を読むエンゲルの姿は、お芝居として完全に間違っていたとしか思えません。
そして、これまたそれにOKテイクを出す演出家が信じられません。
諏訪部順一さんや内田直哉さんに限らず、今回の日曜洋画劇場版の吹き替えには「それって演出として正しいの?」と感じる場面がたびたびありました。その印象が一番顕著だったのが、誰あろう大塚芳忠さん演じるジョーカーだったのです。
次回は、その大塚芳忠版ジョーカーについてオイラが感じたことを率直に語ります!。
「本物じゃないッ!」
諏訪部順一さんによるスケアクロウ吹き替えの、
あまりのダメっぷりにこう叫びたくなりました....
音響監督次第ってことに尽きるのでしょうか?
TV版を見たばかりですが、DVD版を見直したくなりました。
by inuneko (2012-07-20 04:11)
inunekoさん、こんにちは。
後発という不利もあるとは思いますが、やはりDVD版の吹き替えと比較すると、今回の日曜洋画劇場版吹き替えはあまりよろしくなかったですね。改めて藤原啓治さんのジョーカーの素晴らしさを、再確認した次第です。
by 堀越ヨッシー (2012-07-20 10:58)