夢が破れたその先にあるもの....〜「モンスターズ・ユニバーシティ」を鑑賞する [映画鑑賞]
『誰が何と言おうと、自分を信じて!』
〜マイク・ワゾウスキ
『モンスターズ・ユニバーシティ』
【原題:Monsters University(怪物大学)】
2013年/アメリカ映画/カラー/1時間51分
監督:ダン・スキャンロン
脚本:ダニエル・ガーソン&ロバート・L・ベアード
ダン・スキャンロン
音楽:ランディ・ニューマン
声の出演:ビリー・クリスタル ....マイク・ワゾウスキ
ジョン・グッドマン ....ジェームズ・P・サリバン
スティーヴ・ブシェミ ....ランドール・ボグス
ヘレン・ミレン ....ハードスクラブル学長
アルフレッド・モリーナ ....ナイト教授
他
【あらすじ】
緑色の一つ目小鬼マイク・ワゾウスキ(声:ビリー・クリスタル)は、幼い頃からの夢であった“怖がらせ屋”になるべく、名門モンスターズ・ユニバーシティの門を叩いた。そこでマイクは毛むくじゃらの怪物ジェームズ・P・サリバン(声:ジョン・グッドマン)と出会う。通称“サリー”と呼ばれる彼は名門サリバン一家の出身で、怖がらせ屋としての才能に溢れる若者だったが、自惚れが強く怠け者でもあった。そんなサリーに対して並々ならぬ対抗心を燃やすマイクは、日々怖がらせの勉学に励むのだった。
だが、怖がらせ学部の学期末試験の場でマイクとサリーはハードスクラブル学長(声:ヘレン・ミレン)から、学部の追放を告げられる。理由は〜マイク→見た目が怖くない サリー→怖がらせ学を学ぶ姿勢がない〜というものだった。落ち込むマイクだったが、名案を思いつく。それは学園内で開催される怖がらせ大会に出場して優勝するというものだった。「怖がらせ大会で優勝して、自身の怖がらせ屋としての実力を証明してやる!」と意気込むマイクだったが、大会に出場するためには6人チームを組まなければならない。そこでマイクが選んだのは大学内でも落ちこぼれの集まり“ウーズマ・カッパ(通称:OK)の面々4人、そして犬猿の仲であるサリーだった。
こうして、怖がらせ大会の優勝を目指して、マイクたち6人の奮闘が始まった....!
映画「モンスターズ・インク」が嫌いなのです。
....って言うと、ピクサー映画ファンから反感を買うかもですね(^皿^;)。
正確に言うと、“嫌い”ではなく、とても“不満が残った”作品だったのです。
その大きな理由は、物語の終わらせ方でした。
「モンスターズ・インク」では最後、少女ブーとサリーが再び会えるようになって結末を迎えます。そこに感動を覚えた方もきっと多かったと思いますが、それこそがオイラ的にはダメな部分でした。あそこは情に流されず、きちんとサリーとブーの別れを描くべきだったと思っています。人は別れを経験することで成長出来るはずのに、それをうやむやにしたことで物語として非常に締まらない生温い作品となってしまったように感じました。
そうした経緯もあってか、続編である今作にもそれほど期待をしないで鑑賞しました。
ですが、本作は前作を越える素晴らしい作品となっていました。
それはこの作品がこれまでのアニメでは決して描くことのなかった事柄を堂々と描いていたからです。
【“夢や希望”は努力すれば、必ず叶うモノ....?】
「モンスターズ・ユニバーシティ」には、日本語でこんなコピーが付けられています。
誰だって子供の頃の夢がある
難しいのは、その夢を持ち続けること....。
なかなか素敵な謳い文句ですが、実はこの作品の真のメッセージではありません。
またプログラム内で脚本家の斎藤ひろしさんは、“この作品は「夢に向かって進むことの大切さ」を訴えている”と説明していますが、これもまた微妙に違います。
確かにこの作品では、マイクが夢に向かって奮闘する健気な様子が丹念に描かれています。その点は間違いなく感動的です。ですが、前作「〜インク」をご覧になられた方は既にご存知のように、マイクは念願だった“怖がらせ屋”になることは出来ません。そう、マイクの夢は決して叶うことがないのです。すなわち“どんなに努力しても、叶わない夢がある”ということを、堂々と宣言して見せるのです。これにはかなり驚かされました。何故ならこれまでのアニメでは決して描かれることのなかったメッセージだったからです。これまでのアニメでは主人公は頑張った分、その努力が結実して夢が叶う....というスタイルが数多く描かれてきました。
しかしながら、今作ではそうならない姿をとても客観的に描いています。
では、そんな夢のないネガティヴなメッセージがこの作品のテーマなのでしょうか?。
もちろん違います!。
この作品の真のメッセージとは監督のダン・スキャンロンも語っているように....
例え夢が破れたとしても、それで世界が終わりという訳ではない
....ということです。本作が前作「モンスターズ・インク」よりも数倍素晴らしいのは、正にこの部分に集約されています。先述したように、前作「モンスターズ・インク」では少女ブーとの別れを描かないという、実に生温い結末で物語を終えました。しかし本作では一転、見た目には楽しいアニメにも関わらず、厳しい現実をきっちりと描いています。ファンタジーでありながら、安易なハッピーエンドにしなかった点が、この作品をとても価値あるものとしています。
マイクは騒動を起こした責任をとらされ、サリーと共に大学から追放されてしまいます。
すなわち、それは怖がらせ屋になる道が断たれてしまったことを意味します。
人よりも数倍努力してきたにも関わらず、その努力は遂に実を結ばなかったマイク。
これまで怖がらせ屋になるべく、一心不乱に道を歩んできたマイクは、
サリーとの別れの際、弱々しくこう呟きます〜
「人生で初めてなんだ、予定のない行動をとるのは....」
しかし、そんなマイクに対してサリーはこう語りかけるのです。
『学長が言ってたように、お前は確かに怖くない。でも、お前は誰よりも最強の“怖いものなし”じゃないか!』
サリーの言葉に思わずハッとさせられるマイク。
そこにハードスクラブル学長が現われて、マイクに語りかけます。
「ワゾウスキさん、あなたには本当に驚かされたわ。その意気でこれからも人間たちを驚かしなさい」
親友サリーやハードスクラブル学長の言葉を受けて、マイクは気付くのです。
例え怖がらせ屋になれなくとも、人をビックリさせることは出来るということを。
マイクは自身の夢をほんの少しだけ軌道修正して、そしてその夢を手にします。
それは最高の“怖がらせ屋”サリーのサポートをするという仕事に就くこと。
ここに監督ダン・スキャロンが訴えたかったメッセージ〜「夢が破れたとしても、それで世界が終わりという訳でなはい」というメッセージが強く込められています。
今作は前作よりもはるかにエンディングが素晴らしいです。
憧れだったモンスターズ・インク社に、半ばアルバイト同然で入社したマイクとサリー。
そこで二人は、郵便物仕分け係→清掃係→食堂のキッチン&ホール係→ボンベ倉庫の整理係....と、様々な部署で実績を積み重ねていきながら、やがて怖がらせ部門へと昇格していきます。この着実にステップアップしながら夢へと近づいていく二人の姿が、とても清々しいです。我々観客はここまでマイク・ワゾウスキの頑張りを見てきているので、このステップアップの過程が嘘臭くなく、「この二人ならきっとやってのけるだろう」という説得力に満ちあふれています。それにしても、モンスターズ・インク社で業績トップを挙げる二人が、まさか名門大学中退だっただなんて、驚きですね!(^皿^)。
夢を持つことは確かに素晴らしいことです。
それに向かって努力することもまた、とても大切なことです。
しかし、現実世界では夢を実現出来る人はほんの一握りです。
ほとんどの方が夢を諦めたり、挫折したりという経験があると思います。
では、そうした方々は夢を手にした人たちよりも不幸なのでしょうか?。
....そんなことは絶対にありません!。
それをマイクが証明してくれます。例え、夢に破れたとしても、それで全てが崩壊する訳じゃない。ほんのちょっと目先や視点を変えただけで、新たな夢や進むべき道は必ず開ける.....そんなメッセージを力強く発信しているのが、本作「モンスターズ・ユニバーシティ」なのです。そんな価値あるメッセージを込めながら、もちろんアニメーションとしてもとても楽しい作品となっている「モンスターズ・ユニバーシティ」。
是非多くの方々に鑑賞して頂きたい、素晴らしい作品です。
超お薦めします!(^皿^)/
オイラも勝手に“ウーズマ・カッパ(O.K.)入り!(^皿^)
久しぶりにランディ・ニューマン師匠の音楽を聴きました
大学を舞台にしている事もあって、オープニングから賑やかなマーチングバンド風音楽が作品を盛り上げます。さすがベテラン、その仕事ぶりは安定感抜群でした(^皿^)
コレはオイラのサントラ・コレクション入り決定♪
さて、日本語吹き替え版ですが、こちらも素晴らしい出来でした♪
爆笑問題の田中裕二さん、ホンジャマカの石塚英彦さんは、前作に引き続きマイク&サリーを好演されていました。おどおどしたランドールを演じる青山穣さん、ハードスクラブル学長を格調高く演じる一柳みるさんなど、脇を固めるベテラン陣声優さんもまた素晴らしい演技を披露されていて素晴らしかった。
こちらに関してはまた日を改めて記事にしたいと思います(^皿^)
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はっきり言ってオイラの中では凡作扱いの「〜インク」
でも、それも「〜ユニバーシティ」に向けての長い長い予告編だったと思えば、それもまた一興。恐らく「〜インク」を感動作だと位置づけてる人には、今作「〜ユニバーシティ」は物足りなく感じる事だろう。しかし、オイラは生温い「〜インク」よりも、ピリ辛の「〜ユニバーシティ」の方が断然好みだ!(^皿^)/
【2013/7/16追記】
日曜洋画劇場で「モンスターズ・インク」が地上波放送されたので、劇場鑑賞以来10数年ぶりに作品を見ました。びっくりしたのはCGのクオリティの違い。当時あれだけ凄いと思ったCG技術も、「〜ユニバーシティ」と比較すると雲泥の差。やっぱり10年の歳月は大きいなと実感した次第です。
さて、今回改めて作品を見直してみた訳ですが、やっぱりエンディングの結び方には不満を強く感じました。アレを挿入するんだったら、もっと別の表現方法があっただろうと思う。例えば....
ブーの思い出に浸っているサリーをマイクが励まし、仕事に送り出す。送り出した部屋にはブーに似た幼い少女。サリーはブーのことを思い出しつつ、その少女を楽しませて見事エネルギーをゲット。今でも変わらず仕事を頑張っている
....みたいな。ブーとの別れを乗り越えて、それでも前向きに頑張っているサリーの姿を見せた方が絶対爽やかな結末になったと思います。
また、残念だったのはサリーとマイクが追放された雪山での場面。
マイクの制止を振り切って飛び出したサリーは、そりに乗って近くの村を目指す訳ですが、途中岩肌にぶつかってその歩みが止まってしまいます。ところが映画では次の場面で早くもサリーはモンスターの世界に帰還します。そうじゃないでしょ!....あそこはソリが大破して困ってるサリーのもとにマイクを駆けつけさせなきゃダメでしょ!。マイクがサリーの作ったソリよりもはるかに立派なソリで登場し、「まったく俺がついてないと何にも出来ないんだな」と、サリーに手を差し出します。にっこり笑って握手をするサリーとマイク。こうして二人の友情をがっつり描いてからブーの救出に向かうことで、よりドラマが盛り上がったのにと非常に残念ででした。
ところで、今回の「〜ユニバーシティ」が面白い点は、主要人物の描き方が「〜インク」の頃とは全然違うところです。温厚で優しい人柄だった「〜インク」のサリーが、大学時代は自惚れ屋のチャラ男だっただなんて新鮮な驚きでした。また「〜インク」でのマイクは単なる騒々しいお喋りキャラでしたが、「〜ユニバーシティ」では努力家の勤勉家として描かれており、こちらも新鮮な驚きとなっています。
そんな訳で前作「モンスターズ・インク」を見ていると更に楽しめること間違いなしの「モンスターズ・ユニバーシティ」。是非、皆さんも劇場で楽しんで下さいッ!(^皿^)/。
こんにちは。
モンスターズ・インクではあれだけ息の合う二人だったのに、
大学時代はこんなに仲が悪かったのですか?と思いながら観ていました。
そんな二人が少しずつ心を近づけていくところが面白かったです。
マイクはあんなに頑張っても可愛い容姿には勝てなかったのですよね^_^;
でも、最高の相棒を見つけられて本当に良かったです☆
by non_0101 (2013-07-16 22:21)
non_0101さん、こんにちは。
nice!&コメント、ありがとうございます!。
サリーだけかと思っていましたが、マイクも「〜インク」の頃と比べると体型がスリムでしたね(^皿^)。non_0101さんのブログにも書きましたが、パーティー場面でふくれっ面のサリーをダンスに誘うスクイシーがキュートで大好きです♪。
それと二人が「〜インク」に入社してすぐにトップ社員になった訳じゃなかったのが、二人らしくてなんとも素敵でした。
もう一回観に行きたくなるくらい、大満足の作品でした(^口^)/。
by 堀越ヨッシー (2013-07-16 23:28)
こんにちは
私も「モンスターズユニバーシティ」の方がだんぜん好きです。
こっちの方がいいですよね!!
ストーリーもいいし、エンディングも完璧でした。
多くのレビューが「モンスターズインク」の方が良かったと書いているので、え〜!!!って??? モヤモヤした気分でいたところ、こちらの記事を読ませて頂いて、スッキリしました。ありがとうございました。 \(^o^)/
因みに、私はブーをみても可愛く思いませんでした。(見た目の事ではなく)
by hitomi (2015-07-25 12:45)
hitomiさん、はじめまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございます!
「夢に向かって頑張れ!」というのはよく耳にしますが、そうではなく「夢が破れたその後にも、人生にはたくさんの選択肢があるんだ」ということを謳うこの作品は本当に素敵な映画だと思います。だからこそ、若い方々に見て欲しい作品ですネ。
あと、単純にアニメーションとして見ていて楽しい作品です。
主役の二人はもちろんのこと、OKの面々とか、ライバル学生たちとか、とにかく登場キャラクターが皆魅力的ですね♪。
(因みに、オイラはアートが大好き!です...笑)
by 堀越ヨッシー (2015-07-26 19:11)
マイクがモンスターズ・インクのラストでは笑わせ屋として大成しているっていうところまで、青年期の挫折の話であるモンスターズ・ユニバーシティを描くための伏線だったと思ってしまうくらいでした。
ウーズマカッパのメンバーがモンスターズ・インクに忍び込み、同社のスターの面々に共通点なんて無いんだと気づくシーンで私は毎度号泣。
今でもピクサーに限定せずともトップクラスに好きな映画です。
by less (2018-09-19 06:29)
lessさん、初めまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございます!
『モンスターズ・ユニバーシティ』は、本当に素敵な作品ですね。マイクの成長物語であり、またサリーとの相棒(バディ)ムービーでもあり、更には、落ちこぼれ軍団ウーズマ・カッパの逆転劇でもあります。サリーがマイクに贈る言葉〜「お前は怖くない。けど、誰よりも怖いものなしだ」の台詞が最高に感動的でシビレました。
ピクサーはディズニー傘下になって続編ばっかり作ってますが、間違っても「モンスターズ・〜」のパート3を作って、2を汚さないようにして欲しいです!(苦笑)。
ウーズマ・カッパの緑色セーターが欲しいなあ!(^皿^)
by 堀越ヨッシー (2018-09-19 22:42)