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『洋画 じわり字幕離れ』〜朝日新聞2012年1月16日付け記事を読みながら思ったこと [吹き替えについて]

朝日新聞2012年1月16日朝刊の記事によると、洋画から字幕が減りつつあるのだという。衛星放送の映画専門チャンネルや、大手シネコンで、吹き替え版の占有率が増えているそうなのだ。確かに、以前に比べると劇場で吹き替え版を目にする機会は多くなったように感じます。
 
記事によれば、字幕離れの原因に以下のような理由が挙げられている。
 1、衛星放送など自宅鑑賞の場合、字幕だと“ながら視聴”が出来ない
 2、映画館の場合、作品のスタイルが変化(映像の切り替わるテンポが早い、など)したことや、昨今流行りの3D映画の影響。
また現在公開中の「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」を例に出し、1作目、2作目が字幕版オンリーだったのに対し、3作目では25%、4作目では実に44パーセントが吹き替え版の上映だというデータも記載されていた。
(因みに「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」の日本語吹き替え版はとても素晴らしい出来なので、オイラ的には吹き替え版での鑑賞を強くお薦めします!)
 
これは周知の事実だけれど、字幕版がこれほど愛される国は日本くらいで、海外では外国の作品が吹き替えで上映されることの方が多い。記事ではそのことにも触れていて、英語圏ではないイタリアでは98%、フランスでは90%が吹き替えで上映されているというデータも掲載されていた。
 
更に記事では、吹き替え版の普及により、いわゆるタレント起用による映画宣伝という手法が定着したことにも触れている。「ナルニア国物語」に起用された元宝塚出身の大物女優や、「ハッピー・フィート」に起用されたジャニーズのアイドルや人気子役、そして2月公開の新作「TIME/タイム」では時代を反映してか、AKB48の某メンバーが起用されたことなどが記載されていた。
 
映画ジャーナリストの大高宏雄さんは記事の最後をこう締めくくっています。
「外国俳優の個性を大事にし、作品のオリジナル性を受け入れるのが字幕文化だった。以前はあった洋画への敬意が、薄れてきているのではないか」
(前半部分はなんとも大袈裟な解釈で賛同出来ないけど、後半部分に関しては同意見)
 
  
 
さて、洋画における日本語吹き替え版の素晴らしさを、このブログに於いて地味〜に訴え続けているオイラとしては、吹き替え版普及のニュースは大変喜ばしい出来事だと受け止めています。例えば、現在公開中の「ミッション・インポッシブル/ゴースト・プロトコル」の日本語吹き替え版をご覧になられた方が「吹き替え版で映画を見るのも、結構いいわね」と、吹き替え版に対して好印象を持って頂けたなら、こんなに嬉しいことはありません。
 
一方で、この状況を諸手を挙げて喜んでばかりもいられません。何故なら記事に挙げられていたように、いわゆる“タレント起用問題”が存在するからです。
オイラは基本的に吹き替え版へのタレント起用は反対ですが、だからといって100パーセント反対!っていう訳じゃありません。実際タレントさんが吹き替えをして面白くなった例はたくさんあるからです。
最近だと「塔の上のラプンツェル」でラプンツェルを演じた中川翔子さんは素晴らしかったし、「カーズ」でメーターを演じた山口智光さんも良かった。「Mr.インクレディブル」で悪役を演じた宮迫博之さん、「モンスターズ・インク」の田中光さん、「シュレック・フォーエバー」の劇団ひとりさんなど、素晴らしい演技を披露される方も決して珍しくありません(吹き替えと言っても、実写映画の吹き替えとアニメの吹き替えでは、基本的にオイラの中では若干解釈が違うのですが、それはまた別の機会に語りたいと思います)。プロの役者さんでない方々(特に芸人さん)が、役者顔負けの演技を披露するケースは多々あるので、一概にタレント起用反対!と言うつもりはないのです。
ただ一般論で言えば、いわゆるタレントさんが起用されたことで吹き替えのクオリティが下がったケースは過去に何度もありました。だから映画の宣伝は重要なことだけれど、そのために吹き替えというものを安易に利用して欲しくないと強く思うのです。
 
映画は商品です。だからそれを売らんとする気持ちはよく理解出来ます。
ただ昨今の吹き替え版へのタレント起用は、宣伝目的が最優先され、作品そのものに対する敬意や愛情が感じられないのです。
本来日本語吹き替え版の制作は、海外の役者さんが精魂込めて演じているそのお芝居を、同じ(或いはそれ以上の)クオリティの日本語に置き換える作業のはずです。にも関わらず、宣伝目的を優先させ、売れっ子で知名度はあるけれど演技が未熟なタレントを起用することは、オリジナル版に対しての冒涜とは言えないでしょうか?。映画業界で働きながら、映画に対する愛情のない人たちがいる....そのことにものすごく憤りを感じます。タレントさんたちは、そういう人たちの犠牲になっているに過ぎません。彼(彼女)らもまた、ある意味被害者なのです。
 
歌に例えてみれば、よくわかると思います。
海外ですごくヒットした素晴らしい洋楽があるとします。それを日本語に置き換えて歌を出すことにしました。実力派シンガーがそれをオリジナル版に負けないような歌唱力で歌ったとしたら、オリジナル版のファンの方もきっと納得するでしょう。しかし、それをもし歌唱力が未熟なタレントが歌ったとしたらどうでしょう?。オリジナル曲のファンならきっと「冒涜だ!」と憤りを感じるはずです。何故ならそこにオリジナル版への敬意が感じられないからです。
そして、同じようなことが吹き替えに於いても、未だ平然と行われている現実。
宣伝は大事です。でも何よりも大事な事は、まず作品に対して敬意を払うことです。
 
オイラは日本語吹き替え版を愛してやまない人間ですが、それ以上に映画そのものを愛しています。そんな映画に対して業界で働きながら作品を傷つけても平気な人たちが存在する....そのことが本当に許せません。そういう人たちのおかげで、吹き替え版に偏見を持つ人が生まれるとしたら、こんなに悲しいことはありません。
 
さて記事が長くなってきたので、今回はここまで。
次回の記事では、オイラが最近出会ったいわゆる“ダメだった吹き替え版”をいくつか例に挙げて、どこが悪かったのか?について、またまた熱く語りたいと思います(^皿^)。
  

 
「映画業界で働きながら、映画愛のないヤツらがいる....
 そんなヤツは、このバズ・ライトイヤーが許さんッ!」
        201201222134000.jpg
  

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