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そして、ブルーは旅に出る [動物・植物・昆虫の画]

 
ロシアンブルーの猫、ブルーはずっと感じていた....
「ここは自分がいるべき場所ではない」と。
飼い主であるエリザベスは、とても優しい女の子だ。
彼女に対して、不満がある訳ではない。
ここでの生活はとても快適なものだった。 
だがブルーの心が満たされることは決してなかった。
「外の世界をこの目で見てみたい」
ブルーは、そう感じながらずっと過ごしてきた。
 
ある寒い夜のこと。
窓から差し込む満月の光が、
ベッドの上ですやすやと眠るエリザベスの顔を優しく照らしている。
ブルーは静かにベッドへと飛び乗ると、彼女にそっと近づいた。
別れのキスをするために。
ブルーのヒゲが彼女の頬に触れると、彼女は優しく微笑んだ。
「さようなら、エリー」
 
ついにブルーは家の外へと飛び出した。
冷たい夜風が、なぜか心地いい。
「ようブルー、遂に旅へ出るのかい?」
ブルーが振り返ると、そこには誰もいなかった。
庭に生える大きな木をのぞいて。
「世話になったね、フランク」
ブルーは年老いた老木のフランクに近づき話しかける。
老木はブルーの心に囁きかけた。
「私も歩けるものなら、この世界を旅してみたいものだよ」
ブルーはすばやい身のこなしで老木の幹を駆け上り、枝へと腰を下ろした。
そこから見える眺めは、ブルーが窓から眺めるそれと同じだった。
夜空に浮かぶ星々はきらきらと輝き、それは地平線の彼方まではっきりと見えた。
「エリーのことを頼むよ、フランク」
老木は優しくうなずいた(ようにブルーには見えた)。
 
ブルーは爪を立てないように、そっとフランクから降りると歩き始めた。
どこかに行くアテがある訳ではなかった。
ただ、歩き始めた。
 
 
ロシアンブルーの猫、ブルー。
彼がこの世界を救うことになるのは、これから5年と3ヶ月25日後のことである。
そのことはエリザベスも老木フランクも、ブルー自身でさえもまだ知る由もなかった。
ブルーの旅は、始まったばかりである....
 
 
 
      ブルーキャット2.jpg
 

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