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直球勝負!〜「塔の上のラプンツェル」を鑑賞する [映画鑑賞]

東北関東大震災以降、休日を迎えてもなんとなく外に出掛けようという気分にはならなかったここ2週間。別に個人的に被災した訳でもないのに、なんなのでしょう、このなんとも言えない憂鬱な気分は!?。それだけ今回の大震災が我々に与えた影響が大きかったという事なのかもしれません。あの日この国から20000人強もの尊い人命が消えてしまっただなんて....やはり普通の感覚ではいられませんよね。それと.....単にオイラが歳をとったということもあるかもしれません。
しかし、だからと言っていつまでもブルーな気分でいる訳にはいきません。前を向いて歩いていかねば!。こういう時こそ映画に活力をもらうのが一番....という訳で、久しぶりに映画館へと出掛けて参りました。
 
今回鑑賞した作品は、ディズニー長編アニメ第50作品目となる「塔の上のラプンツェル」。
記念すべき50作品目がセルアニメじゃないことに正直複雑な気持ちを抱きつつも、予告編の映像が素晴らしかったので、期待値がそれなりに高くなった今作。
果たして「塔の上のラプンツェル」は、オイラを元気にさせることが出来るか!?。
 
「塔の上のラプンツェル」(原題:Tangled)
 監督:ネイサン・グレノ バイロン・ハワード
 作曲:アラン・メンケン 作詞:グレン・スレーター
 声の出演:マンディ・ムーア、ザッカリー・レヴィ、ドナ・マーフィ、他
 
【あらすじ】
ラプンツェルは人里離れた塔の中でもう18年近くも暮らしている。「外の世界は危険だから」という母親ゴーテルの言いつけを忠実に守って。だが18歳の誕生日を翌日に控え、ラプンツェルは一度でいいから外の世界を体験してみたいと母親に懇願する。が、頑なにそれを拒む母親ゴーテル。落ち込むラプンツェルだったが、そんな時彼女の前にひとりの男が現れる。男の名はフリン・ライダー。盗賊である彼は、今正にお城で盗みを働き、ここラプンツェルの住む塔まで逃げのびてきたのだ。どうにかフリン・ライダーを捕らえ、彼の盗んだ王冠を手に入れたラプンツェルは、王冠を引き渡す条件として自分を外の世界へ案内するように頼みこむ。行き先はラプンツェルが毎年塔の窓から見ていた“無数の星”が舞い上がる場所。渋々条件を呑むことにしたライダー。
こうしてラプンツェルとフリン・ライダーの旅が始まった....。 
 
 
 
見終わって一番感じたことは、「実に“直球勝負!”な作品だなあ」ということでした。
今作「塔の上のラプンツェル」が記念すべき50作品目ということを意識して作られたのかどうかは定かではありませんが、今作はとにかく全体にわたって「これがディズニーアニメだ!」と言わんばかりの演出が随所に見られます。
例えば、ラプンツェルが遂に塔から外に出て、その喜びを歌い上げる場面で彼女に小鳥たちが寄ってくる場面があります。「主人公のお姫様が歌を歌うと小鳥たちが寄ってくる」という演出は、ドリームワークスの「シュレック」でも散々パロディ化され笑いの種にされてきましたが、本作「ラプンツェル」ではこの演出を堂々とやってのけます。「誰がなんと言おうと、これがディズニーアニメのやり方なんです」....そんな製作陣の心意気が聞こえてきそうで、そのブレない演出に逆に清々しささえ覚えてしまいました。
 
そんな訳でとにかく全編に渡り、正当派のディズニーアニメが楽しめる今作。
もちろん、それは主人公をはじめとするキャラクターたちもまた同じです。
主人公ラプンツェルは喜怒哀楽の感情がすごく豊かで、正にチャーミングそのものだし、その他のキャラクターたちもそれぞれが「これぞディズニーキャラ!」といった魅力を大いに醸し出しています。その中でもとりわけ突出した存在感を見せるのが、原作には登場しない映画のオリジナルキャラでもある盗賊フリン・ライダー。自慢のイケメン顔を武器にプレイボーイぶりを見せるフリン・ライダーですが、純粋なラプンツェルと出会ったことで、それまでの人生観が変わり、クライマックスには命がけでラプンツェルを救おうとします。その姿は実に感動的で、映画を見終わってからも是非彼を主役にしたスピンオフ作品「フリン・ライダーの冒険」を作って欲しい!と思ったぐらいです。
 
ディズニーアニメと言えば、主人公をサポートするサブキャラがつきものですが、今作ではカメレオンのパスカルが実にいい味を出していました。ディズニーアニメって、こういうキャラクター作りがホントに巧い!。また盗賊フリン・ライダーを執拗に追跡する警備隊長の愛馬マキシマスもまた愛嬌たっぷりのキャラクターで、ライダーとは敵対関係にありながらも、最後には彼を助けるために大活躍するというおいしい役柄を演じています。
 
悪役が強烈であればあるほど、物語の面白さは増すというもの。今作の悪役である偽りの母親ゴーテルは見た目それほどのインパクトはありませんが、その分内面にはドス黒い闇の精神が淀んでいます。それが時折垣間見える不気味さは、歴代の悪役たちと比べても決して見劣りしません(因みにオイラの中ではゴーテルはずっと女優の田島令子さんに見えて仕方がなかったことをここに記しておく)。また、かつてのフリン・ライダーの盗賊仲間でフリンが裏切ったことを根に持つ双子(!?)の悪役スタビントン兄弟も、これぞ悪役商会!といった風体で楽しませてくれます。
 
 
さて、この作品は正当派ディズニーアニメの流れを受け継ぐ作品だと先述しましたが、それがかえってマイナスに働いてしまったと感じた部分がありました。
その最たる場面がクライマックスでの演出です。ラプンツェルを救出すべく単身塔の中へと乗り込んだフリン・ライダー。だが物陰に隠れていたゴーテルの刃が彼を襲います。背後から腹部を刺された彼は瀕死の重傷を負ってしまうのですが、この場面で彼が刺される部分は直接的にはほとんど映りません(刺される瞬間、カメラのアングルはフリンとゴーテルの上半身よりも更に上を映している)。しかも、刺したナイフには血も付いておらず、出血で床に血がポタポタ....なんて演出もありません。唯一血が見られるのはラプンツェルがフリンの服をめくった時、シャツに滲み出る出血部分のみです。
映画を観る子供たちに残酷な描写を極力見せないようにしようという配慮はなんとなく理解出来るのですが、この場面で重要なのはこの負傷のせいでフリン・ライダーが致命的な重傷を負っていることをきちんと説明する事であり、それを明確に伝えるためには、アニメと言えどやはりちゃんと“血”を描くことも必要だと感じました。
また、同じくクライマックスで悪役が滅びゆく場面。ラプンツェルの持つ再生能力が失われたことで、ゴーテルがみるみる老けていく場面ですが、てっきりオイラは「インディ・ジョーンズ/最後の聖戦」のようにゴーテルがどんどん老化して最後には醜いミイラのような姿に!....という画をわくわくしながら期待していたのですが、残念ながらそうはなりませんでした。多少老化した姿は見られるものの、すぐさま彼女の着ていたマントがその姿を隠し、そのまま悶えながら塔から落下して、ゴーテルは最期を迎えます(その場に残ったのはマントのみ。文字通り粉々となって消滅するゴーテル)。これもおそらく子供たちに配慮した演出で、醜いものだったり怖いものは極力描かないようにしようとする配慮だと思われます。しかしオイラなどは、ファンタジーの世界に於いては、綺麗なものや美しいものばかりを描くだけでなく、そうした闇の部分もちゃんと描いてやることが、かえって子供たちの教育にはいい効果があるのでは?と感じた次第です。ま、単にオイラがミイラとかゾンビが好き♪って話でもあるんですけどね(^皿^)。
 
 
他にも、荒くれ者たち(ほとんど「ヒックとドラゴン」に出てきたバイキングたちとキャラ被り気味)が集う酒場「かわいいアヒルの子」でそれぞれが自らの夢を語る場面は「シュレック3」でも同じようなことをしていたよね、とか、ラプンツェルが街の人々と楽しく踊る場面は、まんま「タイタニック」のディカプリオとウィンスレットだったなあ、とか、気になった演出部分もありましたが、総じて概ねなかなか満足のいく出来だった「塔の上のラプンツェル」でした。
過去のCGアニメ作品(ディズニー製作の作品ってこと)と比較しても、かなりセルアニメ寄りな画作りにも好印象を持ちました。記念すべき50作品目に於いても、その作品づくりに揺らぐことがなかったディズニーアニメ。その変わる事のない姿勢には、やはり好感を覚えます。セルアニメからCGアニメへと移行しつつあるディズニーアニメですが、技術的な部分は変化しても、根っこの部分だけは変わらないで欲しい。そうすればきっとこれからも素敵な作品を生みだしていけると思う。
でも敢えて言うなら、やっぱりオイラはディズニー作品はセルアニメで観たいと強く願う。時流のせいもあるだろうけど、今後はセルアニメとCGアニメを交互に製作したらどうだろう?....そんなことを思うオイラなのでありました。
 
 
純真なラプンツェルと出会ったことで、それまでの価値観に変化が見え始めるフリン・ライダー。孤独だったラプンツェル同様、フリン・ライダーもまたある意味“孤独”な人生をおくってきた人間だったのだ。
      
      「必ず戻ってくるよ、....必ず!」
      ユージーン.jpg
 
 
さて、ディズニーアニメと言えばミュージカル部分を忘れてはいけません。
今作で音楽を手がけるのは、ご存知アラン・メンケン師匠。
今は亡き作詞家のハワード・アシュマンとコンビを組んで「リトル・マーメイド」を始め、数々のディズニー作品に素晴らしい音楽を提供してきたことは、ファンなら周知の事実であります。そんなアラン・メンケン師匠は、今作「ラプンツェル」でも素敵なナンバーを披露してくれております。
 
オープニングナンバーである「♪自由への扉」は、ラプンツェルが一日の出来事を爽快に歌い上げる軽快なナンバー。アコースティックギターの音色が印象的なこのナンバーは、明るくポップな内容で物語の幕開けにぴったり。
 
一方、邪悪な母親ゴーテルが歌い上げる「♪お母様はあなたの味方」は、文字通りミュージカル調そのもので、まさにクラシック。一見すると子供を慈しむように聞こえる歌詞が、実はゴーテルの邪悪な精神を表現していて、曲の雰囲気(「シカゴ」or「ナイン」風味♪)とミスマッチなのが面白い。
 
そして、お約束のデュエットソングとして披露されるのが「♪輝く未来」。無数のランタンが空に浮かぶ場面でしっとりと歌い上げられるこの曲は、アラジンとジャスミンが歌った「♪ア・ホール・ニューワールド」を彷彿とさせるようなロマンティックなナンバー。カップルならばこの場面でうっとりとするのが正しかろうと思われます。
もちろん、歌だけでなく、劇中に流れるスコアも相変わらず素晴らしいクオリティ。
アラン・メンケン師匠、さすがです!(^皿^)。
 
 
作曲アラン・メンケンと作詞グレン・スレーターのコンビは、知る人ぞ知るディズニーアニメの佳作「ホーム・オン・ザ・レンジ」(日本未公開)でもコンビを組んでいたんだね。どおりで今作も素晴らしい出来な訳だ、納得♪
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オイラの場合、いつもは値段の安い輸入版を買うことが多いのだけれど、今作は日本語版の歌も素晴らしい出来だったので、ボーナストラックとして日本語版も収録されている国内盤サントラを購入。
....が、しかーし!
買ってみた後にわかったのだが、なんと剣 幸さんの歌う「♪お母様はあなたの味方」や酒場での楽しい歌「♪誰にでも夢はある」が収録されていないではないか!....ガッデム!。
どうせなら全曲収録しろってんだい。という訳で、収録されていない歌は、DVD版で改めて堪能しようと思うのであった。

 
次回は、お約束の日本語吹き替え版について、やっぱり熱く語ります!。
(しかし、改めて見ると今回の記事はめちゃくちゃ長いなあ....反省) 

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コメント 4

ジジョ

こんにちは〜☆
>“直球勝負!”な作品だなあ
ほんとそうですね!
この王道感。安心感。。
なんか癒されました〜^^
by ジジョ (2011-05-01 13:26) 

堀越ヨッシー

ジジョさん、こんにちは。
久しぶりに王道なディズニーアニメを堪能しました♪。
ジジョさんと同じで、オイラもディズニー製のCGアニメはあまり好きではありませんでしたが、「ラプンツェル」はかなりセルアニメを意識した絵作りになっていて、それが何より良かったですね(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2011-05-02 18:07) 

NO NAME

とっても丁寧な解説ありがとうございます!!
素晴らしいです。
by NO NAME (2014-12-09 09:00) 

堀越ヨッシー

NO NAMEさん、はじめまして!
ご訪問&コメント、ありがとうございます。
つたない文章で実にお恥ずかしい限りですが、
楽しんで頂けたのなら幸いです♪
ありがとうございました!(^U^)
by 堀越ヨッシー (2014-12-10 13:56) 

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