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映画「アベンジャーズ」の日本語吹き替え版について(中編) [吹き替えについて]

 
映画ファンの間で様々な物議を醸し出した「アベンジャーズ」の日本語吹き替え版。 
〈前編〉に引き続き、今回の〈中編〉では、いよいよその核心に迫ります。
 
映画「アベンジャーズ」では劇場公開に合わせて、新たなボイスキャストが起用されました。竹中直人さん(ニック・フューリー)、米倉涼子さん(ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドー)、宮迫博之さん(クリント・バートン/ホークアイ)の御三方です。
皆さん、芸能界の第一線でご活躍されている方々ばかりですね!(^皿^)/。
 
  ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドー ....米倉涼子(過去作は佐古真弓)
  クリント・バートン/ホークアイ      ....宮迫博之(過去作は阪口周平)
  ニック・フューリー/シールド長官     ....竹中直人(過去作は手塚秀彰)
 
 
『なんだか“ブダペスト”を思い出すわね』
ブラック・ウィドーことナターシャ・ロマノフを演じるは、米倉涼子さん。
テレビドラマ等でもタフで強く美しい女性を演じることが多い米倉涼子さん。そうした経緯もあって今回キャスティングされたのだと推察されます。実は今回の吹き替えキャストで一番懸念していたのが米倉涼子さんの演技でした。ですが、意外にも(失礼!)なかなかの健闘ぶりでした。思っていたより米倉涼子カラーが出ていなくて、スカーレット・ヨハンソンの声として違和感なく見られました。ただ、吹き替え演技としてはやや平坦で未熟な部分も多く、「アイアンマン2」で佐古真弓さんが演じられたそれには遠く及ばない出来でした。
 
それはロキとの対峙場面で顕著に表れます。ロキに過去の秘密を見破られ、ショックを受けたナターシャは思わず涙ぐみながら「あなたは怪物よ」とつぶやきます。しかし、これはロキをあざむくためのナターシャの演技で、ロキの真意を見抜いたナターシャは一転「あなたの目的はハルクなのね」とクールな姿を見せつけます。この場面は映画冒頭の登場時と同じく、女スパイとして暗躍してきたブラック・ウィドーのしたたかさを垣間見られる重要な場面であり、かつ見せ場でもあります。「あなたは怪物よ」と「目的はハルクなのね」の台詞を明確に言い分けることでブラック・ウィドーのしたたかさを表現出来る場面でしたが、米倉涼子さんはその点をクリア出来ていなくて非常に残念でした。
 
 
『君と俺じゃ、違う思い出だがな』
ホークアイことクリント・バートンを演じるは、宮迫博之さん。
芸人である宮迫博之さんがジェレミー・レナーの声を!?....これはかなり驚きを覚えた異色キャスティングでした。芸人さんが二の線を演じると、どうしてもコントで二枚目を演じているようにも聞こえてしまい、その点が痛し痒しの部分でもあります。そういった意味でいうと、宮迫博之さんの吹き替えはそうした芸人カラーはさほど出ておらず、なかなかの健闘ぶりでした。ただ吹き替え演技というシビアな視点に於いては、やはり米倉涼子さんと同様お芝居が平坦でメリハリに欠けるものでした。劇中を見ればおわかりのように、ホークアイは感情の起伏が少ないクールガイです。実はこうしたキャラクターの吹き替えが一番難しかったりするものです。なぜなら少ない抑揚の台詞に、様々な感情を込めて喋らなければならないからです。加えて、今回ホークアイは前半でロキの魔法によって心が操られてしまい、その違いも表現しなければなりません。これには相当の演技力が要求されます。お芝居が本職ではない宮迫博之さんにはちょっと敷居が高かったように感じられました。
 
 
『いえ、償いはすることになるでしょう』
シールド長官ニック・フューリーを演じるは、竹中直人さん。
まさか同じスキンヘッドだということでキャスティングされた訳じゃないと思いますが、なぜ今回竹中直人さんが起用されたのか?、まったくもって謎のままです。実は竹中直人さんの吹き替えに期待出来ないことは、鑑賞前からある程度予想していました。
以前、「バットマン&ロビン〜Mr.フリーズの逆襲」(97)に於いてジョージ・クルーニーの吹き替えを担当された際の演技を見て、その実力を把握していたからです。結果、やはり竹中直人さんの吹き替え演技は、「バットマン&ロビン」の頃とそんなに変わらないものでした。
無論、竹中直人さんは役者さんなので、お芝居自体が決して下手という訳ではありません。
問題なのは、全編を通してお芝居に竹中直人カラーが色濃く出過ぎているという事です。だからサミュエル・L・ジャクソンの映像と声が終始リンクすることがありませんでした。それはいったい何故なのか?、この点に関しては、後日〈後編〉にて詳しく触れたいと思います。
 
今回の「アベンジャーズ」では、これまでゲスト的扱いだったシールド長官ニック・フューリーが満を持して登場します。劇中でそのキャラクター像がより深く描かれるのはもちろんですが、それとは別に今回のニック・フューリーにはある重要な役割があります。
それはこの作品のオープニングとエンディングを飾るという役回りです。
 
映画の冒頭、邪神ロキによって“四次元キューブ”を奪われ、シールド本部も壊滅的な状況に陥ります。「戦争状態に入った」と宣言するニック・フューリーに対して、フィル・コールソンは「我々はどうすれば?」と尋ねます。ニック・フューリーの顔がアップになり、その表情からは強い決意が伺えます。ここでアラン・シルヴェストリのテーマ音楽とともに、映画のタイトル「AVENGERS」がどーんとスクリーン上に映し出されます。この瞬間、我々アメコミ映画ファンの興奮は最高潮に達し、いよいよ「アベンジャーズ」の物語の幕開けだ!と、テンションがあがるのです。
しかし、この場面でそうしたテンションになるためには、前段のニック・フューリーの台詞〜「我々は、戦争状態に入った」を、如何に緊張感をもって台詞に出来るか?が重要になってきます。しかしながら、竹中直人さんによる台詞は割とのっぺりしていて、“戦争状態”という危機的状況の緊張感が伝わってきません。要するにニック・フューリーとしての“台詞が活きていない”のです。
 
またエンディングでは、ニック・フューリーとマリア・ヒルが総括をしています。
マリア・ヒルは「アベンジャーズがバラバラになってしまったけど、これでいいんでしょうか?」とニック・フューリーに尋ねます。するとニック・フューリーは「戻ってくるさ」と平然としています。「なぜ?」と更に食い下がるマリア・ヒルに対して彼はこう告げます〜「我々が必要とするからだ」と。これはもちろん劇中の登場人物としての台詞ではありますが、同時に映画ファンの声を代弁する台詞でもあります。つまり、“映画ファンが望めば、またアベンジャーズには再会出来ますよ”ということを、ニック・フューリーの言葉を借りて宣言しているのです。こうしたダブル・ミーニングの台詞もまた、竹中直人さんの台詞は説得力に欠け、非常に残念な部分でした。
 
 
今回とても重要な役回りを演じることになるニック・フューリーの声には、やはりある種のカリスマ性が欠かせません。しかし、竹中直人さんの吹き替え演技には、そうした力強さやカリスマ性が乏しく、また竹中直人さん自身のカラーも強く出過ぎたせいもあって、おせじにも魅力的なニック・フューリーになっていたとは言えませんでした。
因みに、過去作でニック・フューリーを演じられてきたのは手塚秀彰さんです。過去に「交渉人」(98)などでもサミュエル・L・ジャクソンの声を演じられてきたので、お芝居に関しての安定感はありますが、手塚さんの声質はよくも悪くもややバタ臭く、いわゆる“リーダー声”の雰囲気ではありません。今回のニック・フューリーに関しては「スター・ウォーズ/ファントム・メナス」(99)でメイス・ウィンドゥを演じられた玄田哲章さんや「ジャッキー・ブラウン」(97)でオデールを演じられた大塚明夫さんに演じてもらいたかったです。玄田哲章さんや大塚明夫さんのような、いわゆる“リーダー声”が似合う声優さんに演じてもらうことで、よりかっこいいニック・フューリーになったのにと、悔やまれてなりません。
  
 
今回の〈中編〉では、ゲスト声優として参加された、竹中直人さん、米倉涼子さん、宮迫博之さんの演技について触れてみました。お三方のお芝居に総じて言えることは、“キャラクターとのリンク率がとても低い”ということでした。素晴らしい吹き替えとは、例えば本田貴子さんのマリア・ヒルであったり、東條加那子さんのウェイトレスのように、海外の役者さんが本当に日本語を喋っているかのような錯覚に堕ちるものです。お三方の吹き替えには、そうした高いクオリティを感じられる魅力は残念ながらありませんでした。
例えば、オイラのように何十回と作品を見続けていれば、お三方の吹き替えにもそれなりに慣れてきますが、やはり初見の方には他の声優さんとの実力の違いが明確に感じられて、そのあたりがAmazonでの辛口レビューに繋がってしまったのだと思います。
  
 
次回〈後編〉では、更に深いところにまで突っ込んで、今回の吹き替えについて総括してみたいと思います。一応、年内掲載予定ですが、果たして....!?(^皿^;)。
  

 
     ブテナローック!!
     ニック・フューリーと水虫薬.jpg 
竹中直人色が強すぎて、ニック・フューリーの口から水虫薬の名前が飛び出るかと思いましたゼ(^皿^;)
  
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何回見ても、面白いッッ!!(^皿^)/
ジョス・ウェドン監督、アンタ最高だッッッ!!!  
 

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