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そして二人はそれぞれ別の道へ〜「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」を鑑賞する [映画鑑賞]

人気シリーズ「X-MEN」の最新作「X-MEN:ファースト・ジェネレーション」を見てきました。今回の物語は、「スター・ウォーズ」でいうところのエピソード1的物語。
若くして頭脳明晰な学者チャールズ・エグゼビア(のちのプロフェッサーX)。
片や、親の仇討ちに執念を燃やす孤高の男、エリック・レーンシャー(のちのマグニートー)。
この生き方も考え方も違う二人の男が運命的な出会いを果たし、友情を育む物語。
互いにミュータントとして、その存在確立のため協力していた二人が、何故別々の道を歩むことになってしまったのか?、その顛末が描かれます。
監督は「キック・アス」の大ヒットが記憶に新しいマシュー・ボーン。
期待大です!(^皿^)/。
 
『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』 
(原題/X-MEN:FIRST CLASS)
監督・共同脚本:マシュー・ボーン
製作:ストーリー:ブライアン・シンガー
音楽:ヘンリー・ジャックマン
  
【CAST】
チャールズ・エグゼビア/プロフェッサーX....ジェームズ・マカヴォイ
エリック・レーンシャー/マグニートー  ....マイケル・ファスベンダー
セバスチャン・ショウ          ....ケヴィン・ベーコン
エマ・フロスト             ....ジャニュアリー・ジョーンズ
レイブン・ダークホルム/ミスティーク  ....ジェニファー・ローレンス
ハンク・マッコイ/ビースト       ....ニコラス・ホルト
エンジェル・サルバドール/エンジェル  ....ゾーイ・クラヴィッツ
アレックス・サマーズ/ハボック     ....ルーカス・ティル
ショーン・キャシディ/バンシー     ....キャレブ・ランドリー・ジョーンズ
アザゼル                ....ジェイソン・フレミング
クエステッド/リップタイド       ....アレックス・ゴンザレス
モイラ・マクタガート(CIA捜査官)   ....ローズ・バーン

 
【あらすじ】
裕福な家庭に育ち、名門大学で若くして教授にまでのぼりつめた男、チャールズ・エグゼビア(ジェームズ・マカヴォイ)。強力なテレパシー能力を持つ彼は、自身の能力を隠しながらも、同じように特別な能力を持つミュータントの研究を続けていた。幼い頃に知りあい一緒に成長してきたミュータント、レイブン・ダークホルム(ジェニファー・ローレンス)は、そんな彼を近くで支えていた。
ある日、チャールズの元へCIAの捜査官モイラ・マクタガート(ローズ・バーン)が現れ、捜査協力を依頼してきた。秘密結社ヘル・ファイアクラブを率いる謎の男セバスチャン・ショウ(ケヴィン・ベーコン)がミュータントだと進言してきたのだ。セバスチャンは米ソの冷戦につけ込み、この2大強国を互いに衝突させて人類を破滅に導こうと画策していた。セバスチャン・ショウの身柄拘束のための作戦決行日、同行していたチャールズ・エグゼビアは、そこでセバスチャン・ショウの命を狙う謎の男エリック・レーンシャー(マイケル・ファスベンダー)と、運命的な出会いを果たす。彼もまた磁力を操る能力を持つミュータントであった。生き方も考え方も違う二人であったが、打倒セバスチャン・ショウという目的のため、互いに共闘することを誓う。価値観が違うことで度々衝突するチャールズとエリックだったが、それでも奇妙な友情で結ばれていくのだった。
その頃、CIAの追跡から逃れたセバスチャン・ショウは、新たな恐るべき計画を実行しようとしていた....。
 
 
 
実は未だに「キック・アス」未見で、今回が初マシュー・ボーン監督作品だった訳ですが、なかなか実直な演出をする監督だなとの印象を受けました。チャールズ・エグゼビアとエリック・レーンシャーとの友情物語を軸に、登場人物の多いこのドラマを実にそつなくこなしたマシュー・ボーン監督。131分というタイムテーブルも、そんなに長く感じることなく最後まで映画を楽しめました。
その一方で、例えばザック・スナイダーのように映像へのこだわりといったものは意外と普通なんだなとも感じました。クライマックスでエリックが自身の能力を使って巨大な潜水艦を持ち上げるといった、このテのアクション映画にはつきものの迫力ある映像は確かに見応えがありましたが、それよりも登場人物たちがミュータントであることの悩みや葛藤を抱くといったドラマ部分の演出の方が冴えて感じられました。そういった意味では1、2を監督し、今回は製作を担当したブライアン・シンガー監督と似ているタイプの監督なのかもしれません。
 
そのブライアン・シンガーですが、今回彼が製作に復帰した(ストーリー原案も担当)ことで、作品の裏テーマでもある“差別するもの、されるもの”という色合いが、今作でもかなり色濃く反映されていたような気がします。その象徴として描かれるのがミスティークことレイブン・ダークホルム。自身の醜い容姿に悩み普通になりたいと思いながらも、その一方でミュータントとしての誇りを失いたくないという、二つの感情の狭間で揺れ動く微妙な気持ちを、マシュー・ボーンは見事に演出しています。そんな彼女の姿を通して、我々は間接的に差別問題を考えさせられることになります。
 
今作でなによりも興味深いのは、やはりエリック・レーンシャーという人物。
幼い頃にナチス・ドイツによって迫害された彼は、人間が持つ邪悪な部分をどうしても容認することが出来ません。それ故にミュータントは将来的に人類から異端視され、やがては管理や迫害されるのでは!?との恐れを脳裏から消し去ることが出来ません。結果としてそれならば逆に人類を支配してしまおうという発想になる訳ですが、これがエリックがこの世で最も忌み嫌うネオナチと同じ発想になってしまっているところが、実に皮肉的です。人類の邪悪な部分を信じて止まないエリックが、結果としてその邪悪な部分に取り込まれ、選民思想に陥ってしまう悲哀。そんな複雑なキャラクターをマイケル・ファスベンダーが、実に魅力的に演じています。ワイルドで端正な顔立ちがとてもかっこよくて、これから先の活躍が大いに期待される俳優さんです。
 
一方、物語の主役であるチャールズ・エグゼビアの描き方が、エリック・レーンシャーと比較するとやや消化不良な感が否めず、その点だけがこの作品で唯一不満の残る点でもありました。エリック・レーンシャーがなぜ人類の邪悪な部分を許容することが出来ないのか?は、過去のシリーズや今作に於いてもある程度語られていますが、その一方で、なぜチャールズ・エグゼビアがこれほどまでに人類の善良なる部分を信じて疑わないのかについては、その明確な描写がありません。それゆえに、映画を観ているとどうしても哀しい過去を経験してきたエリック・レーンシャー側に感情移入をしてしまいます。エリックと同様に、どうしてチャールズ・エグゼビアが人類の善良なる部分を信じて疑わないのか?、その信念を抱くきっかけとなったエピソードを盛り込んだら、人間ドラマとしてもっと厚みが出たかもしれません。
それでもチャールズ・エグゼビアを演じたジェームズ・マカヴォイは、なかなか好演しており、マイケル・ファスベンダーとは正に対極の魅力を醸し出していました。
 
そんな二人が登場する場面で、すごく大好きなシーンがあります。
それはチャールズ・エグゼビアがエリック・レーンシャーにミュータント能力の使い方についてレクチャーをする場面です。それまで独自のやり方で磁力を操る能力を使用してきたエリック。それは怒りの感情を利用することであり、かつてセバスチャン・ショウが教えてくれたやり方でもありました。だが、チャールズはそのやり方に異論を唱えます。....「怒りの感情だけでは駄目だ。真の力を発揮させるためには対極の感情も必要だ」。そう言うと、チャールズはエリックの記憶の中から愛する母親との幸せなひとときの場面を甦らせます。その記憶に思わず涙するチャールズ、そしてその記憶を共有して、やはり同じように涙を流すチャールズ。そしてその結果、エリックは今まで以上の力を発揮させることが出来るようになるのです。二人の間に交わされる友情がさりげなく描かれるこの場面は、とても美しく感動的なシーンでした。
 
 
人類の善良なる部分を信じて疑わないチャールズ・エグゼビア。
片や、人類の邪悪なる部分を信じて疑わないエリック・レーンシャー。
どちらもその考え方に間違いはないのだけれど、対極に位置する二人は結果として対立することになってしまいます。そんな悲劇的な二人の男の物語を見事に描ききったマシュー・ボーン監督には、とりあえず合格点をあげようと思います。部分的には不満点もあるけれど、ドラマとしての見応えは充分にあるし、シリーズ物には嬉しい小ネタ(なんとヒュー・ジャックマンがカメオ出演!)も満載で、思わずニヤリとする部分もありと、まずまずの内容でした。過去のシリーズを観ていればもちろん面白さ倍増だし、仮に観ていなくてそれなりに楽しめる娯楽作品となっています。
オイラ的には、お薦めの作品です!(^皿^)/。
 
 
      やっぱり悪役顔だよね?、のケヴィン・ベーコン
      セバスチャン・ショウ.jpg
 
 
 
ところで、今回のオープニング。
エリックの幼少時代、強制収容所で母親と引き離された彼が、思わず自身のミュータント能力を開花させるという場面が描かれていますが、シリーズをご覧の方ならご存知のように、これは記念すべき第一作目のオープニングとまったく同じという憎い演出。あまりにそのまんまの映像なので、てっきり第一作目の映像をそのまま使用したのか?と思いきや、実はこれ今作の撮り下ろしなのだそうです。
そして、何よりも嬉しかったのがこの場面に流れる音楽が、同じく一作目の音楽を担当した今は亡きマイケル・ケイメンのスコアだったこと。故マイケル・ケイメンファンのオイラは、違った意味でこの場面でひとり涙したのでありました(T〜T)。
余談ですが、今作でエリックの母親役を演じた女優さんは、ちょっとホラー風味の顔立ちで、かなり恐いです....(^皿^;)。

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tomoart

nice!返しに参りました(笑)。ヒューもそうですが、一瞬だけレベッカ・ローミンも出てますね。レイヴンがエリックの寝室に入り込んでいて、子供だから相手にしないのかと大人の姿に変身した時、それが前三部作にミスティーク役で出演していたレベッカ本人だそうですw Wikiの受け売りですけど(笑)。
by tomoart (2011-06-18 03:07) 

堀越ヨッシー

tomoartさん、こんにちは。
そうらしいですね!。オイラもあとで知ったんですが、映画を観ている最中は全然気がつきませんでした(^皿^)。
マグニートーを演じたマイケル・ファスベンダーがワイルドでかっこ良かったですけど、そんな彼がウルヴァリンに若造扱いされるシーンに、思わずニヤリ!でした。
by 堀越ヨッシー (2011-06-18 09:39) 

inuneko

チャールズは人類の性善説を信じても居るのでしょうが、まず家族を作りたいってのが根底にあるんじゃないでしょうか。ミスティークを受け入れたのも距離をおいたのも手放したのも。家族になれる可能性のある全人類をどうしても害せない。聖人ではなく、エリック同様幼少期の経験であぁなったと。あと、セレブロでつながっちゃった全人類がいよいよ他人と思えないってのも大きいんじゃないかと愚考いたします。
by inuneko (2011-06-18 23:52) 

堀越ヨッシー

inunekoさん、こんにちは。
なるほど!、そういう見方も出来ますね。それにしても、チャールズはミスティークに対してちょっと冷たいですよね。あんな美人が身近にいたら、オイラだったらすぐ抱いちゃいますね♪(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2011-06-19 07:20) 

inuneko

長く家族として暮らしちゃうと精神的に近親相姦タブーが生まれちゃうのかも。
by inuneko (2011-06-19 23:06) 

堀越ヨッシー

ま、オイラはプロフェッサーXほど高潔な人間じゃないので、煩悩出まくりですね(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2011-06-20 21:05) 

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