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ようこそ、悪夢の世界へ!〜「エルム街の悪夢」2010版を観る [映画鑑賞]

昨今のホラー映画リメイクブームに乗っかって、遂に「エルム街の悪夢」までもがリメイクされました。
ウェス・クレイヴン監督が1984年に世に送り出したホラー映画「エルム街の悪夢」。
夢の世界と現実世界が交差するスリリングなドラマ展開と、怪優ロバート・イングランド演じる殺人鬼フレディ・クルーガーの魅力も相まって、同作はホラー映画のアイコン的作品となりました。シリーズは7作目まで作られ、テレビでもミニシリーズが放送されたほどの人気ぶりでした。
そんな人気ホラー映画「エルム街の悪夢」をリメイクするのは、これまでにも「テキサス・チェーンソー」や「13日の金曜日」など、有名ホラー映画のリメイク作品を手がけてきたマイケル・ベイ率いるプラチナム・デューンズ社。監督にはこれまでPVやCM映像作品を手がけていたサミュエル・ベイヤーが抜擢されました。今作が長編デビュー作品になるそうです。そして注目の新フレディ・クルーガーを演じるは、「ウォッチメン」でロールシャッハを演じたのも記憶に新しい個性派俳優ジャッキー・アール・ヘイリー。
26年ぶりにスクリーンへと甦った稀代の殺人鬼フレディ・クルーガーが果たしてどんな活躍(!?)を見せるのか?、ファンとしては期待大です!(^皿^)/。
 
 
【あらすじ】
深夜のダイナー。恋人ディーン(ケラン・ラッツ)に呼び出されたクリス(ケイティ・キャシディ)は彼が悪夢に悩まされていることを知らされる。ディーンをなんとか励まそうとするクリスだったが、ディーンはクリスの目の前で自らの首をかっ切って自殺してしまった。それはまるで、誰かに操られているかのようでもあった....。
その日を境にクリス自身も悪夢を見始める。やがてそれに呼応するかのようにクリスのかつての恋人だったジェシー(トーマス・デッカー)やダイナーでバイトしているナンシー(ルーニー・マーラ)、そしてナンシーに片思い中のクエンティン(カイル・ガルナー)までもが悪夢を見るようになってしまった。どうして彼らが!?....驚いた事に彼らが見る悪夢には決まって同じ男が現れていた。それは顔をはじめ全身をひどい火傷に覆われた男。緑と赤の縞模様セーターと言う独特の出で立ちで現れるその男は、不敵な笑いを浮かべながら、ナイフの爪を付けた手袋で襲ってくるのだった....!
 
 
 
リメイク版の監督に大抜擢されたサミュエル・ベイヤーは、非常に手堅い演出を見せてくれます。浮ついた印象もなく、この有名ホラー映画を実直にリメイクしてるなあ....との印象を受けました。少なくとも「フレディVSジェイソン」のロニー・ユーよりは数倍マシだと感じました(^皿^)。しかしながら、長編作品を手がけたことのない経験が、若干露呈してしまった感は否めません。98分という比較的短い作品でありながら、作品からは冗長な印象を受けました。それは物語の展開にやや乏しさを感じたからかもしれません。決してつまらなくはないけれど、同時にハラハラドキドキもしない....そんな印象の作品でした。
ある意味、優等生的とも言えるサミュエル・ベイヤー監督の演出。その実直さが作品のテイストにかえってマイナス感を与えてしまったようです。そのマイナス部分について、オイラが思ったことを以下に述べてみたいと思います。
 
【新フレディ・クルーガーの容姿について】
映画公開前からすごく気になっていた新フレディの容姿。確かにメーキャップのクオリティは過去の作品と比べると格段に高くなっていました。火傷(やけど)による肌のつっぱり具合などは非常にリアルで、過去のフレディとは違うリアルな生々しさを表現しておりました。しかしながらそのリアルのメイクのおかげで、フレディというキャラクターにとって一番大事な部分が失われてしまったようです。
それはズバリ!、フレディの喜怒哀楽の表現です。
ジャッキー・アール・ヘイリー自身も言っているように、今作のリメイク版フレディは、かなりユーモア部分を押さえたシリアスなキャラクターとなっています。オリジナル版フレディを好きなファンの中には、そのことに対する不満を持つ方もいらっしゃるようですが、オイラはそれ自体はさほど気にはなりませんでした。むしろ、リアルなメイクによって失われてしまった感情表現の乏しさの方がすごく気になりました。
オリジナル版フレディの特殊メーキャップは、ロバート・イングランドの素顔をちゃんと活かしたものだったので、劇中でのフレディの魅力は=俳優ロバート・イングランドの魅力でもあった訳です。しかしながら今作のリメイク版フレディは、せっかく個性派俳優ジャッキー・アール・ヘイリーを起用しているにも関わらず、その彼の魅力が100%発揮出来てるとは言えなかった気がします。怒りを表す時も、喜びを表す時も、基本的にあまり表情が変わらない新フレディ....それが実にもったいない!。ジャッキー・アール・ヘイリーらしさが見えなければ、彼を起用した意味がないというもの。彼の表情がもっと透けて見えるようなメイクにすべきだったと強く感じました。
ジェイソンなど“かぶりもの系”殺人鬼のような、表情が解らない故に怖い殺人鬼キャラももちろんいますが、フレディ・クルーガーはそれとは一線を画すキャラクターです。人間臭い表情を見せるのがフレディの魅力でもある訳で、その部分に関しては今作のリメイク版フレディの容姿には及第点を点けざるを得ません。
 
【フレディ・クルーガーという人間について】
今作ではフレディ・クルーガーの過去が描かれています。
郊外の幼稚園で用務員として働いていたひとりの男。優しそうな顔の裏で、実は幼児虐待を繰り返していた異常な男。それを知った親たちは司法の裁きから逃れたフレディを、私刑にしてしまう....そんな過去が描かれています。それ自体は特に問題はないのですが、個人的にはもう少しフレディの異常性を明確に描いて欲しかったかなと。そしてもうひとつ強く描いて欲しかったのが、刃物に対する執着心。どうしてナイフの爪をつけることになったのか?....そんな事を感じさせるような印象的な映像があったら、後の姿に説得力がもっと生まれたのになあ....と感じました(まあ、それらしき映像はあるにはあるんだけど、アレではちと弱い)。
    
【夢の世界の表現について】
「エルム街の悪夢」の魅力のひとつが、夢と現実が入り交じる世界観。
現実だと思っていた世界が、いつの間にか夢の世界へと突入する....そんな展開が面白い訳です。だから夢の世界が奇抜なほど、その対比が出来て面白いのに、今作の夢の世界はどうにも味気ない。ほとんど現実世界と変わらないその風景には、正直ちょっとがっかりしました。
確かに現実世界から夢の世界へと入る導入部分は差異がない方が観ている側も騙されて面白いけど、一旦夢の世界に入ったからには、見たこともないような非現実的世界を見てみたい!と思うもの。なにもクリストファー・ノーラン監督の「インセプション」や、ティム・バートン監督の「アリス・イン・ワンダーランド」ばりの映像を見せてくれ!とまでは言わないけど、サミュエル・ベイヤー監督自身のオリジナリティ溢れる独創的な“夢の世界”を見せて欲しかった。
 
【ホラー映画としてのケレン味】
ホラー映画なのだから、ファンとしては現実世界ではありえないような殺されっぷりを見たいと思うもの。はい、そこの人「悪趣味だなあ....」と思わないで下さいね(^皿^)。それがホラー映画の醍醐味であり、正しい楽しみ方なのでありますよ。
映画のクライマックス....ナンシーの手によって夢の世界から現実世界へと引きずり出されたフレディ。激闘の末、遂にナンシーの振り下ろした刃物がフレディの首を直撃します。その瞬間「うわっ、フレディの首がハネられる!」....そう思ったオイラ。いや、オイラだけでなく劇場の誰もがそう思ったはず。ところが実際は首がちょっとだけ切れて、哀れフレディ絶命....。
「....えっ!?」
これで決着なの!?....と、思わず唖然として苦笑するしかありませんでした。
サミュエル・ベイヤーは、ある意味漫画的な演出を意図的に避けたのかもしれません。しかし、ホラー映画のクライマックスがこれでは何とも味気ない!。そこは豪快にフレディの首をはね飛ばして終わり!でしょう?(まあ、実際にはコレで映画終わり!じゃないんだけど。それもまたホラー映画のお約束でありまして....)。リアルなアプローチも大事だけど、ホラー映画なんだからケレン味が欲しい。エルム街の悪夢に、羊たちの沈黙的アプローチは必要ないぞ!(^皿^)。
 
 
【まとめ】
サミュエル・ベイヤー監督の実直な演出にはすごく好感が持てました。しかしながら、その真面目さ故の演出にある種のつまらなさも感じてしまった、そんな印象のホラー作品でした。一方、出演する若手キャストの面々はそれぞれにいい味を出していて、そちらにも非常に好感が持てました。かつてオリジナル版に出ていたジョニー・デップのように、いつか遠い将来、この中からスターが誕生するかもしれません。
個人的には、サミュエル・ベイヤー監督にはもうちょっと欲を出して個性を出しても良かったんじゃないか?と感じました。PV映像やCM映像を撮ってきただけあってその映像には光るものがありましたが、これからはもっと物語を語れる力量をつけて欲しいな!。
サミュエル・ベイヤー監督の次回作に期待したいっすね!(^皿^)。
 
 
 
        「お前が今見ている“世界”は....現実かな?」
        エルム街の殺人鬼.jpg

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: 株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント
  • 発売日: 2010/05/13
  • メディア: CD

スティーヴ・ジャブロンスキーは、いい仕事してたな、ウン♪(^皿^)
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