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そんなのカンケイねー!....とは言わせないッ!〜『レゴ バットマン・ザ・ムービー』を鑑賞する [映画鑑賞]

       『レゴ バットマン ザ・ムービー』
        (原題:THE LEGO BATMAN MOVIE)
        2017年 アメリカ映画 カラー 105分
 
  監督:クリス・マッケイ
  製作:フィル・ロード&クリストファー・ミラー
  音楽:ローン・バルフェ
 
声の出演:ブルース・ウェイン/バットマン   ....ウィル・アーネット
     ジョーカー             ....ザック・ガリフィアナキス
     ディック・グレイソン/ロビン    ....マイケル・セラ
     バーバラ・ゴードン         ....ロザリオ・ドーソン
     アルフレッド・ペニーワース     ....レイフ・ファインズ
     他
 
【あらすじ】
犯罪都市ゴッサムシティの平和を守るヒーロー、バットマンは街の人気者だ。
その正体は独身貴族の大富豪ブルース・ウェインその人。ヒーローとして街の人気者である彼も、私生活では孤独な日々を送る毎日だった。彼に仕える執事アルフレッドは、そんな主人の行く末を心配して家族を持つように説得するが、ブルースにその気はない。だが、そんな思いとは裏腹に、ウェイン邸に養子がやってきた。孤児院育ちのディック・グレイソンは、ブルースとは対照的に無邪気で明るい性格の少年。そんなディック少年に振り回される日々が始まった。
そんな折、ゴッサムシティ随一の犯罪者ジョーカーが、警察に自首をしてくる。
何か裏があると考えたバットマンは、ジョーカーを宇宙の果てにあるという宇宙刑務所「極悪ゾーン」へと収監することを画策する。だが、それこそジョーカーの企みそのものだった....
 
 
【「レゴ・ムービー」の感動再び!....のはずが(泣)】
これまでにもレゴによるバットマンのアニメ作品は何本か映像化されてきましたが、今回は2014年公開の「レゴ・ムービー」方式が踏襲されています。すなわち「デジタルCGによる人形コマ撮りアニメーションの再現」です。実際のミニフィグを使って撮影したかのようなアナログ感たっぷりの映像は見ていて楽しく、またレゴブロックによる街並みはジオラマ模型を見ているかのような風情が有り、見ていて本当に壮観でした。
デッドプールのようなバットマンの語りから始まる本作。オープニングでバットマンがデスメタル調のロック(歌詞は自身の格好良さをアピールする内容)を歌いながら敵と戦う場面がありますが、このキャラクター造形も「レゴ・ムービー」に登場したバットマンが下敷きとなっています。
しかし、これがそもそもの間違いの始まり!
映画「レゴ・ムービー」をご覧になられた方なら既にご存知だとは思いますが、実はあの作品は小学生低学年とおぼしきエメット少年が脳内で作り上げた空想世界が物語の核となっています。つまりは子供によるごっこ遊びだった!と言うオチが最後に判明する訳です。だから、映画の中に登場するバットマンも、いわゆる既存のキャラクターではなく、エキセントリックな人物になっていたのです。
しかし、本作は基本的に「レゴ・ムービー」とは別物です。撮影スタイルこそ「レゴ・ムービー」ですが、別にエメット少年が考えた物語などではありません。それなのに、エメット少年が創造したバットマン像をそのまま流用したことで、バットマン映画としていろんな部分で歪みが生じてしまい、大きなマイナス要因となってしまいました。
 
【ファン目線で見た時に感じた、とても不快な演出】
オイラはティム・バートンの映画をきっかけにバットマンファンになった人間ですが、そんなオイラから見てバットマンの描き方に関してとても不快な場面がいくつかありました。
代表的なものは以下の2つです〜
 
・孤児院でのバットマンの立ち振る舞い
・ロビンを養子にする件と、その後の扱い
 
オープニングでジョーカー率いる悪役(ヴィラン)軍団との戦いに勝利し、ゴッサムシティの平和を守ったバットマンは、ゴッサム市民にちやほやされてご満悦。更に気持ちよくなりたいと考えたバットマンは、その足で孤児院に直行し、子供達にバットマングッズをこれでもか!と大量にバラまきます。喜ぶ子供たちを横目に見ながら満足して去っていくバットマンですが....
日本にもたくさんのバットマンファンがいると思いますが、是非アンケートをとって見たいです、「あの場面で笑えましたか?」と。オイラは全然笑えなかったです。自身も幼い頃に両親を殺され、ある意味孤児的な側面もあるブルース・ウェインが、ナルシシストな満足感を得る為に孤児たちを利用する....そんな姿を見て笑えるでしょうか?。ブラックジョークにしても品がないし、何より孤児たちを見下しているかのようなギャグに、とても不快な印象が拭えませんでした。
 
ロビンに関する描写は、更に酷いことになっています。
ロビンが養子になる経緯がかなり適当(ここではちょっと割愛させて頂きます)ですが、酷いのはその後です。とある理由でスーパーマンの自宅からある物(アイテム)を盗むことになったバットマンは、同行したロビンをまるで手下のように扱うのです。あれこれロビンに指示を出しながら、自身は高見の見物を決め込むバットマン....全然カッコよくない(涙)
 
そもそも、本作のテーマは、孤独なバットマンが家族を持つまでの物語です。
だからこそロビンとの交流に関しては、例えお笑いやギャグが盛り込まれていたとしても、基本的な核の部分はきちんと描くべき箇所です。そこをないがしろにして、最後だけお涙頂戴の演出にしても、感動的になるはずがありません。物語の流れを考えたらスーパーマンの自宅での一件はとても重要な場面です。笑いが生まれる演出にしたいのであれば、バットマンがロビンを手下のように扱う姿などではなく、天然で明るいロビンにバットマンが振り回される姿を描くべきです。本来単独行動を好むバットマンに対し、ロビンが勝手に同行して作戦にも参加してしまう。そんなロビンに対してハラハラドキドキしながらも、同時にロビンの聡明さや身体能力の高さに気づくと言う演出にすべきだった。何より、これまで単独行動しかしてこなかったバットマンが、他者との強力により物事を成し遂げる価値に気づく....と言う普遍的なメッセージも盛り込めたはずなのに、目先の笑いに囚われて稚拙なギャグに終始してしまった演出には、本当に萎えました。
 
【笑いに対するアプローチが、薄っぺら過ぎる!】
オープニングの戦いの後、自宅に戻ったバットマンがマスクを被ったままでくつろぐ描写がありますが、このギャグ演出が本作に於ける笑いを象徴しているように感じます。
一言で言うと、表面的で薄っぺら!
ここではブルース・ウェインの孤独な日常が描かれており、執事アルフレッドが心配する中、ブルース本人はそんな生活を異常だとは思っていないと言う点が笑える訳ですが、そんな場面でマスクを被ったままでいると言う薄っぺらなギャグが挿入されてしまう事で、本来笑うべき演出に別のフィルターがかかってしまい、笑いの軸がブレてしまうのです。

アルフレッドの登場場面に関しても、同じことが言えます。
感傷に浸るブルース・ウェインの背後にそっと近づいたアルフレッドは、驚いたバットマンに蹴り飛ばされてしまいます。蹴り飛ばされたアルフレッドはピアノと激突!....と、いわゆるトムとジェリー的なギャグが披露される訳ですが、「そうじゃないでしょ!」とオイラは言いたいんです。この場面で笑えるのはアルフレッドが蹴り飛ばされる事ではなく、凄腕のバットマンに対して音もなく忍び寄る事が出来るアルフレッドの佇まいが笑えるんです(映画「モンスターズ・ユニバーシティ」でのスクイーシーのギャグですね)。映画の後半でアルフレッドがバットマンの扮装をして一緒に戦う場面がありますが、ここも同じ。いかにも「面白いギャグでしょ?」と言わんばかりの演出ですが、見ているコチラとしては萎えてしまいます。むしろ執事の格好をしたままで戦った方がよっぽど笑えるし、そっちの方がアルフレッドらしさが出ています(ハタキで戦うとかね)。
 
孤児院でのバットマンの描き方や蹴り飛ばされるアルフレッドの演出、スーパーマンの自宅でのロビンに対する扱いといい、本作の笑いに対するアプローチにはバットマンの世界観に対する愛情を感じないんです。バットマンのことを揶揄したり、小馬鹿にした演出を見ていると、この監督はバットマンのことを本当に好きなのか?と、甚だ疑問を感じます。
 
【いろんな部分で、軸がズレまくっている】
ギャグ演出もそうですが、そもそも作品としての軸がズレまくっています。
この作品は「レゴ・ムービー」のスピンオフ作品なのか?、はたまた純然たるバットマン映画なのか?、その立ち位置がはっきりとしません。もちろんコメディではあるにしても純然たるバットマン映画であるべきだ!とオイラは考えますが、変なところでレゴ・ムービー感を出しているせいで作品としておかしな事になっているのです。
 
例えば、本作のバットマンは、いわゆるマスタービルダーです。
マスタービルダーとは、「レゴ・ムービー」の中に登場する設定で、レゴブロックを自由自在に分解・組み立てを出来る特殊能力を持った人たちのことを指します。本作でも危機に陥ったバットマンがレゴブロックを組み立てて乗り物を作る場面があります。それ自体はとてもかっこいいのですが、この設定があるせいで物語に変な矛盾が生じてしまいます。つまりこの能力を使えるなら、何でも出来るじゃん!というツッコミが入ってしまう訳です。映画の世界観を考えたら、マスタービルダーというキャラ設定は別に必要不可欠ではなかったし、それがなくても物語としては十分成立していたと思います。
 
自宅でくつろぐバットマンがトム・クルーズの映画「ザ・エージェント」を見ながら嘲笑するというギャグがありますが、これも同様です。バットマンの世界に、なぜわざわざ現実世界とリンクするようなギャグを持ち込むのでしょうか?。「トム・クールズをイジってますよ、面白いでしょ?」という制作サイドの薄っぺらな思惑が透けて見えて、かえって白けてしまいます。そもそも、このギャグ自体がバットマンの世界観とは全く関係ないものです。「何でも有り!」のレゴ・ムービーならまだ成立したギャグだったかもしれませんが、本作では全く意味のないギャグでした。
どうせイジるなら、トム・クルーズじゃなく、ジョージ・クルーニーの方をイジれよ!
 
【あくまでもかっこいいバットマンを描くべき!】
オープニングで、ロックを歌いながらバットマンが敵と戦う場面がありますが、そういう事じゃないんですよ。我々ファンが見たいのは、あくまでも、かっこいいバットマンなんです。見た目はレゴブロックで完全におもちゃなのに、実写並のかっこよさを見せるバットマン....そのギャップこそが一番面白いポイントじゃないですか!。それなのに「ロックを歌うバットマンの姿が面白い!」....という考えそのものがズレまくってるんです。
 
身もふたもない言い方をしますが、この映画って結局はレゴの商品を売るための作品ですよね?。だとするならば、バットマンがかっこいいというのは、ある意味とても重要な部分だと思うんです。子供達がこの映画を見た時、「バットマンのギャグ面白かったなあ、パパ、おもちゃ買って!」とはならないですよね?。やっぱり「バットマン、かっこ良かった!、パパ、おもちゃ買って!」となる訳です。
コメディ作品だから笑いの部分はもちろん重要ですが、その多くはバットマンの世界観に沿ったモノにするべきです。トム・クルーズをイジったり、ロックを歌ったりすることじゃないんです。
 
また、レゴファンの楽しみにも応えてくれない点も残念でした。ゴッサムシティの沖に浮かぶ島にあるウェイン邸や秘密基地バットケイブなど、建造物はどれも素晴らしいデザインばかりでしたが、それらをじっくりと見られる映像は少なかったです。例えば、遠景でしか登場しないウェイン邸であれば、実際に空撮したような映像で、最終的には窓で佇むブルース・ウェインまで近づくワンショット長回し映像とか、アーカム・アサイラムであれば実際に正面入り口から刑務所内に入っていく映像など、ジオラマ模型を愛でるような感覚を味わえる、そんなこだわりの映像をもっと見たかったです。
 
 
【なんだかんだ言いながら、結局は大好き!】
たくさんダメ出ししてきましたが、それもこれもレゴが大好きだから!
そして、バットマンが大好きだから!!です。
残念ながら、本作はバットマンファンとして、またLEGOファンとして満足のいく内容ではありませんでした。なんでも有りだった「レゴ・ムービー」の世界観をそのままバットマンの世界に持ってきて、結果的に失敗してしまった....そんな印象を強く受けました。
ここでクリス・マッケイ監督にひとつ言っておきたい。もし、今後続編が作られるような事があれば、是非その時はオイラに一言声をかけて欲しい!。
スクリプト・ドクターとして、喜んで参加しますぜ!(^皿^)/
 
 

Lego Batman Movie: Songs From Motion Picture

Lego Batman Movie: Songs From Motion Picture

  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Watertower Mod Afw
  • 発売日: 2017/02/03
  • メディア: CD
映画的にはイマイチな内容だったのに、
こういう作品に限って音楽はものすごく素晴らしかったするのが皮肉
スコア担当はローン・バルフェ
ハンス・ジマーに負けず劣らずのかっこいい楽曲を提供してくれています♪
トラックNo.1の♪BLACKは、本当にカッコよくて痺れます!


The LEGO BATMAN MOVIE: The Making of the Movie

The LEGO[レジスタードトレードマーク] BATMAN MOVIE: The Making of the Movie

  • 作者: DK
  • 出版社/メーカー: DK Children
  • 発売日: 2017/02/10
  • メディア: ハードカバー
映画のメイキングブック
キャラクターであるミニフィグやバットマンの乗り物のコンセプトアートがたくさん載っていて見応えありの一冊。ペンギンやトゥー・フェイスなど、実写映画版のデザイン案(ダニー・デビートやトミー・リー・ジョーンズ)もあって面白い。映画にはほんのちょっとしか登場しない各ヴィランの乗り物もたくさん掲載されています。お気に入りはトゥー・フェイスのブルドーザー(左右非対称のデザインが最高にかっこいい!)。是非、商品化して欲しいです♪


レゴ(LEGO) バットマンムービー ジョーカーのローライダー 70906

レゴ(LEGO) バットマンムービー ジョーカーのローライダー 70906

  • 出版社/メーカー: レゴ (LEGO)
  • メディア: おもちゃ&ホビー
映画にも登場するジョーカーのローライダー
このキット、車体下部に輪ゴムが付いていて、車体が上下するギミックを楽しめるんですが、なんと映画版に登場するローライダーにもこの輪ゴムが付いていて(車がクラッシュした際に確認できます!)、その芸の細かさにちょっと感動しました♪
 
 
 映画の出来には不満でも、結局LEGO買っちゃうんだけどネ♪(^皿^;)>
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