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内輪モメは地球外(よそ)でやってくれ!?〜「マン・オブ・スティール」を鑑賞する [映画鑑賞]


         『マン・オブ・スティール』
          原題:MAN OF STEEL(鋼鉄の男)
        2013年 アメリカ映画 カラー 2時間23分
 
        監督:ザック・スナイダー
        製作:クリストファー・ノーラン
        脚本:ディヴィッド・S・ゴイヤー
        音楽:ハンス・ジマー
 
   出演 
   クラーク・ケント/カル・エル    ....ヘンリー・カビル
   ロイス・レイン/DP紙・新聞記者   ....エイミー・アダムス
   ゾッド将軍/クリプトン星の軍人   ....マイケル・シャノン
   ジョナサン・ケント/クラークの父親 ....ケビン・コスナー
   マーサ・ケント/クラークの母親   ....ダイアン・レイン
   ジョー・エル/クラークの実の父親   ....ラッセル・クロウ
   ペリー・ホワイト/DP紙・編集長   ....ローレンス・フィッシュバーン
   ファオラ=ウル/ゾッド将軍の部下  ....アンチュ・トラウェ
   ネイサン・ハーディ大佐       ....クリストファー・メローニ
   他
【あらすじ】 
高度な文明を誇る惑星クリプトンは、今や崩壊の危機にあった。
科学者のジョー=エル(ラッセル・クロウ)は、生まれたばかりの息子カルを助けるため、脱出ポッドに子供を搭乗させると、宇宙へと放った。行き先はクリプトン星人とよく似た種族が住む“地球”という星。そして、クリプトン星は消滅した....
それからしばらくして....地球で立派な大人へと成長したカル=エルの姿があった。
ジョナサン(ケビン・コスナー)&マーサ(ダイアン・レイン)夫妻の子供として育ったクラーク・ケント(ヘンリー・カビル)は今、放浪の旅を続けている。「なぜ自分は人と違う能力を授かったのか?」その答えを探す旅だった。やがて、クラークは自身が他の惑星からやってきた異星人だということを知る。
一方、時を同じくして地球に飛来してきた一隻の宇宙船。搭乗していたのはクリプトン星で謀反を起こし、追放されていたゾッド将軍(マイケル・シャノン)だった。クリプトン星再生を願うゾッド将軍は、ジョー=エルが息子カル=エルに託した“ある物”を追って、地球へとやってきたのだ。やがてゾッド将軍による容赦のない攻撃が始まった....!
 
 
「ウォッチメン」「エンジェル・ウォーズ」など、その映像表現には定評のあるザック・スナイダー監督が「スーパーマン」を撮る....そう聞いて期待せずにはいられなかった本作「マン・オブ・スティール」。果たして彼がスーパーマンの世界をどのように描くのか?、興味と期待感に胸を膨らませながら作品を鑑賞しました。が、残念ながらその内容は期待していたものとはちょっと違っていました。いったい何がダメだったのでしょうか....?
それは今作が目指した“スーパーマンが存在するリアルな世界を描く”というアプローチが、途中から間違った方向に進んでいったのを感じたからです。
 
ディヴィッド・S・ゴイヤーによる脚本はまずまずでした。ザック・スナイダー監督の演出も好印象で、育ての父親であるケヴィン・コスナーの描き方などは琴線に触れるものでした。「ダークナイト」シリーズを成功させたクリストファー・ノーラン監督が製作ということもあって、作品の雰囲気はそれと非常に似通ったものとなっていたことは否めません。そして、それは途中までは成功していたように思います。しかしクライマックスになると、このリアルテイストのアプローチが、思わぬ形で間違った方向に進んでいった事を強く感じました。
 
クライマックス、ゾッド将軍は地球をクリプトン星人に適応するように、巨大な装置“ワールド・エンジン”を使い、惑星改造を行おうとします。しかし、クラーク・ケントは決死の覚悟でそのひとつを破壊することに成功、ゾッド将軍の目論見は崩れさってしまいます。クリプトン星再興の夢が断たれたゾッド将軍の怒りは最高潮に達し、遂にスーパーマンとゾッド将軍の一騎打ちが、大都会メトロポリスを舞台に始まります。地球に於いて超人である者同士の戦いは凄惨を極め、大都会メトロポリスの街並が次々と破壊されていきます。そして、遂に決着の時がきます。地球人を助けようとして、スーパーマンはゾッド将軍を殺してしまうのです。これが今スーパーマンファンの間で賛否両論の物議を醸し出しているという、いわゆる“スーパーマン人殺し問題”です。でも、個人的にはそのこと自体には、それほどのショックは受けませんでした。むしろ、「ウォッチメン」のザック・スナイダー監督にしては映像表現がソフトだなと感じたくらいです。クラーク・ケントは、地球人を救うためとは言え、自身がしたことにショックを覚え、思わず「うわわわわあぁぁ!」と咆哮します。
 
....でも、ちょっと待って!!
 
確かにゾッド将軍殺害(同じ同胞であるクリプトン星人殺害という意味に於いても)は、クラークにとってもの凄くショックだったかもしれません。でも、何かもの凄く大事なことを忘れちゃいませんか?。それはここまでの一連の戦い(ワールド・エンジンが作動・崩壊する過程も含む)に於いて、多くの地球人が犠牲になっているということです。あれだけ大都会が崩壊・壊滅すれば、例え直接的な映像がなくても、大量の死傷者が発生してしまったことは容易に想像出来ます。しかしながら、驚くことに今作ではそのことに一切触れません。クラーク・ケントが哀しみの慟哭を上げるのは、ゾッド将軍を殺した時ではなく、多数の地球人が自身の戦いによる影響で死んでしまったという、紛れもない事実を目の当たりにした時であるべきです。あれだけビルや街並の崩壊をリアルに描くんだったら、その後に待ち受ける現前たる事実もきちんと描くべき。そうしたリアルこそが今作「マン・オブ・スティール」の目指したリアル=現実志向だったはずです。しかし、最後の最後で描くべきリアルを放棄した「マン・オブ・スティール」は、残念ながら失敗作だと言えるでしょう。
 
余談ですが、映画「アベンジャーズ」では、クラマックスの戦いの後、復興に立ち上がる市民の姿が描かれます。また政治家らしい人物は「街を破壊したのは、ヒーローたちですよ」と批判してみせます。こうした光景こそがリアルというのではないでしょうか?。
本作のクラーク・ケントはオープニングから苦悩し続ける姿を見せますが、一番葛藤しなければならない事実(=地球人を守るため同胞であるゾッド将軍に立ち向かいその手で殺めてしまったにも関わらず、皮肉にも多くの地球人の犠牲者を出す結果になってしまった)に関しては、そんなに悩むこともなくうやむやとなってしまいました。プログラム内のアメコミ翻訳家ヤスダ・シゲルさんによれば、このゾッド将軍殺害は原作にもあるとのことで、その後クラーク・ケントはその罪悪感から精神状態が不安定になり、自らを宇宙に追放するそうです。
 
コミックスの方が、よっぽどリアルじゃんッ!(^皿^;)
 
映画「マン・オブ・スティール」が目指したリアルとは一体何だったのでしょうか?。
未知の惑星クリプトンの映像化?、破壊され倒壊するビル群や街並の映像?、超人同士の闘いによるあり得ない動き?、異星人の宇宙船や宇宙服?....etc
そうした映像のリアルさはもちろん大切ですが、本作が目指したリアルはもっと別なところにあったはずです。父と子の関係であったり、特殊能力をもったが故の悩みや葛藤、或いは自身のアイデンティティーの探究など、“もしスーパーマンがこの世に現実に存在したら?”という世界観的リアルを目指して製作されたはずです。途中まではそれがうまくいっていたのに、最後の最後で突然絵空事になってしまった点は、返す返すも残念でなりません。
映画のエンディング....
クラーク・ケントは、世界の状況を把握出来る場所として、デイリー・プラネット社へと就職します。ここで、ようやく我々がよく知っているスーパーマン本来の仮の姿“新聞記者クラーク・ケント”が披露される訳ですが、その姿に残念ながら感動はありませんでした。
脚本家ディヴィッド・S・ゴイヤーの「うまくまとめたでしょ?」的な声が聞こえてきそうで、かえってその事がシャクに触りました。自身の戦いで多くの死者を出したにも関わらず、その葛藤を描かずに呑気に新聞社に就職してきた彼の姿に、リアルさはありません。
リアル=現実的を目指すなら、クラーク・ケントの就職先は新聞社などではなく、倒壊したビルを解体・建設する工事現場だ!と、強く感じた「マン・オブ・スティール」でありました(^皿^)。
 
 
【誰がザック・スナイダー監督の今後を見張るのか....!?】 
 
 
 
主演で新スーパーマンを演じたヘンリー・カビルやロイスを演じたエイミー・アダムスなど、キャスト陣はなかなかの好配役。地味だけど意外な好演を見せるケビン・コスナーやダイアン・レインもグッジョブ。やっぱりケビン・コスナーはとうもろこし畑が似合いますなあ(^皿^)。ラッセル・クロウが科学者を演じるのは多少無理を感じるものの、父親像としてはいい雰囲気を出していました。ただオープニングのアバターチックな映像にはちょっとズッコケましたけど。あと人工知能(?)のジョー=エルは反応良過ぎ!(^皿^)。
そして、ローレンス・フィッシュバーンは太り過ぎ!(^皿^)。
「レッドブル」の時の華奢な身体はどこへいった!?。
そんな中抜群の存在感を見せるのが、ゾッド将軍!....じゃなくて、
その部下ファオラ=ウルを演じたドイツ人女優アンチュ・トラウェ。
全身から溢れ出るドSの雰囲気が、Mにはたまりませんデス!(^皿^;)。
 
  『“名誉の死”を遂げさせてやる!』
  ファオラ=ウル.jpg
  

【最後にもうひと言だけ!】 
クライマックスのスーパーマンVSゾッド将軍の闘いについて。
この映像自体はとても迫力があり、巷の噂通り実写版ドラゴンボールそのものでした。
ですが、一連の映像がほぼオールCGアニメになってしまった事で、返ってリアルさが薄れてしまった感は否めません。例えば、殴られた際の痛みとか、吹き飛ばされて建物に激突した際の痛みとかが全然伝わってこなかったのは残念。大都会メトロポリスで建物を破壊しながら超人同士が高速で戦うというシチュエーションは、映画としてはケレン味があって正解だったのかもしれません。でも、上記したようにその事による影響(=多数の死傷者が確実に発生する)という事を踏まえたら、この展開は明らかに間違っていたように思います。もし、スーパーマンが地球人の安全の事を本気で考えたら、真っ先に彼が頭に思い浮かべるべき事は、闘いの場を人気のない場所にするという事。当然映画の画としては地味になるだろうけど、その方が物語としては説得力が生まれ、断然リアルだったように思います。地球の事を思いゾッド将軍と対立したはずなのに、地球人のことをまったく考えない闘いを展開するスーパーマンの姿は、やっぱり矛盾だらけ。だから、最後の最後で地球人を救おうとしてやむなくゾッド将軍を殺害する場面も、とってつけたようでとても白々しく感じてしまいました。ケヴィン・コスナー演じる父ジョナサンの「あーもー、だから言ったじゃん、力は使うな!って」という声が聞こえてきそうでした(^皿^)。
スーパーマンVSゾッド将軍の映像は、今作で最も“ザック・スナイダー監督らしい”映像のオンパレードです。が、結局のところ、製作のクリストファー・ノーラン監督が目指した作品のリアルテイストとは真逆になってしまったことが、とても皮肉でした。ひょっとするとアレは、ノーランに対するザック・スナイダー監督のささやかなる抵抗だったのかもしれません。
「言う通りここまでシリアスに作ったんだから、最後くらい俺の自由に撮らせてくれ!」
そんなザック・スナイダー監督の心の叫びが聞こえてきそうです。
それはオイラの穿った見方でしょうかね?(^皿^)。
  
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世間的には失敗作みたいな位置づけになっているらしい「〜リターンズ」。
でも、オイラは結構好きな作品です!(^皿^)
  

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