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映画「アベンジャーズ」の日本語吹き替え版について(前編) [吹き替えについて]

 
     『アベンジャーズ』日本語吹き替え版キャスト
       吹き替え翻訳:岸田恵子  吹き替え演出:三好慶一郎
 
   トニー・スターク/アイアンマン        ....藤原啓治
   スティーブ・ロジャース/キャプテン・アメリカ ....中村悠一
   ブルース・バナー/ハルク           ....宮内敦士
   雷神マイティ・ソー              ....三宅健太
   クリント・バートン/ホークアイ        ....宮迫博之
   ナターシャ・ロマノフ/ブラック・ウィドゥ   ....米倉涼子
   ニック・フューリー/シールド長官       ....竹中直人
   フィル・コールソン捜査官           ....村治学
   マリア・ヒル捜査官              ....本田貴子
   邪神ロキ/ソーの義弟             ....平川大輔
   ペッパー・ポッツ/トニー・スタークの秘書   ....岡寛恵
   ジャーヴィス/人工知能のコンピューター    ....加瀬康之
   エリック・セルヴィグ博士/宇宙物理学者    ....金子由之
   (ウィキペディア参考)
 
 
『もし地球を滅ぼしたら、必ず復讐(アベンジ)する』
アイアンマンことトニー・スタークを演じるは、藤原啓治さん。
藤原啓治さんによるロバート・ダウニーJr.の吹き替えも、だいぶハマり役となってきました。しかし気のせいかな?、今回の藤原啓治さんの吹き替えは心なしか元気がないように感じました。もちろんお芝居自体そのものは素晴らしかったけれど、どことなくテンションが低いというか元気がないというか。「アイアンマン」の時のトニー・スタークと比較すると、明らかにテンションが低いように感じました。「アイアンマン」のトニー・スタークのテンションを100だとするならば、今回の「アベンジャーズ」のトニー・スタークのテンションは80ぐらい。それぐらい明確なテンションの違いを感じました。
もっとも単にオイラの思い過ごしなのかもしれませんが。
もしくは、トニー・スタークが人間的に成長したってことなのかな?(^皿^;)。
  
『星条旗のデザインは、古臭くないかな?』
キャプテン・アメリカことスティーヴ・ロジャースを演じるは、中村悠一さん。
純粋であるが故に融通の利かない生真面目な兵士スティーヴ・ロジャースの声を、中村悠一さんが好演。青臭い性格であるが故に、軟派なトニー・スタークと何かと衝突してしまうキャップ。しかし、そんな反発しあっていた二人が、お互いを認めあい協力して戦う姿は、実に感動的でかっこいい!。
  
『僕の秘密を教えようか?....いつも怒ってる!』
ハルクことブルース・バナー博士を演じるは、宮内敦士さん。
温厚で紳士的なブルース・バナー博士を演じるマーク・ラファロのソフトな語り口を、吹き替えで忠実に再現されている宮内敦士さんの演技力はさすがです。おせじにもイケメンとは言えないマーク・ラファロですが、宮内敦士さんのかっこいい声が何故かピタリとハマるナイスキャスティングでした。
  
『ロキは復讐したいんだ....この俺に』
雷神ソーを演じるは、三宅健太さん。
クリス・ヘムズワース演じるソーに、三宅健太さんの野性的な声がピタリとハマる。ワイルドでありながら、神としての気品もちゃんと表現しているあたりの演技はさすが!。劇中、その喋り方をトニー・スタークから「シェークスピア劇風か?」とバカにされるソーですが、そんなちょっと浮世離れしているソーを、三宅健太さんは魅力的に演じられていました。
 
『上からの方が、遠くまで見渡せる』
弓の名手ホークアイことクリント・バートンを演じるは、宮迫博之さん。
 
『ロキは、ハルクを目覚めさせる気よ』
女スパイ・ブラック・ウィドゥことナターシャ・ロマノフを演じるは、米倉涼子さん。
   
『現在より、我々は“戦争状態”に入った』
シールド長官ニック・フューリーを演じるは、竹中直人さん。
  
『彼らがまとまるためなら、これぐらいのこと....』
シールド捜査官フィル・コールソンを演じるは、村治学さん。
村治学さんと言えば、米ドラマ「CSI:科学捜査班」でグレッグを演じられていたように、比較的若い優男のキャラクターを得意とされていますが、その村治学さんがフィル・コールソンのようないわゆる“おじさん声”を演じられるようになったのかと、個人的にちょっとしみじみしております。フィル・コールソンの温厚でありながら、静かに闘志を燃やす正義感を丁寧に熱演されていてグッド!。
  
『そのカード、ロッカーに入っていたんですよね?』
シールド捜査官マリア・ヒルを演じるは、本田貴子さん。
こうしたクール・ビューティーの声に、本田貴子さんの声は本当にぴたりとハマります。
本作はマリア・ヒルを演じるコビー・スマルダーズ(美人!)が本当に魅力的でかっこいいのだけれど、それを更に魅力的にしているのが、本田貴子さんの吹き替えです。これぞ正に良質の吹き替え!。
  
『跪くがいい.... 跪けッ!!』
邪神ロキを演じるは、平川大輔さん。
ご存知「ロード・オブ・ザ・リング」のレゴラス(オーランド・ブルーム)の声でお馴染みですね。そんなイケメン声の平川大輔さんによるロキですが、今回はそのかっこ良すぎる声がちょっと裏目に出てしまったようです。別にロキの声がかっこいいのは構わないんだけど、ロキの持つ狡猾で邪悪な雰囲気を今ひとつ表現出来ておらず、その点が残念な部分でした。特にブラック・ウィドゥとの対峙場面では、それが顕著に現われてしまったのが悔やまれます。単刀直入に言うと、ロキを演じたトム・ヒドルストンの演技を踏襲していなかった。基本的に今作でのロキは結構なへなちょこな訳ですが、ナターシャとの場面ではなかなかの迫力を見せるトム・ヒドルストン。そのヒドルストンの迫真の演技をカバーしきれてないのが実に惜しい。
平川大輔さん、もうちょっと頑張って!。
  
『12パーセント、水入らずね』
トニー・スタークの恋人兼秘書のペッパー・ポッツを演じるは、岡寛恵さん。
アメコミ映画ファンには、ご存知「スパイダーマン」のメアリー・ジェーン・ワトソン(キルスティン・ダンスト)の声でお馴染みですね。岡寛恵さんといい、本田貴子さんといい、「アベンジャーズ」には実力派の女性声優陣が揃っていて、本当に嬉しい限り。
余談ですが、エンディングでインタビューに答える女性が出てきますが、その女性の声を担当している声優さんも素晴らしい演技を披露されています。呼吸とか息づかいが向こうの女優さんとぴったりとリンクしていて、これぞ芸術的吹き替え!といったところ。この声優さんはいったい誰なのだろう?....誰か教えて!
今回ペッパー・ポッツ(グゥイネス・パルトロー)はゲスト出演なので、岡寛恵さんご自身も出番はそれほど多くありませんでしたが、お芝居は盤石の出来。「アイアンマン3」での活躍にも期待が高まります。

『トニー様、ミス・ポッツにお繋ぎしますか?』
トニー・スタークの頼れる相棒・人工知能ジャーヴィスの声を演じるは、加瀬康之さん。
人工知能でありながらユーモアのセンスを持ち合わせているジャーヴィスの声を、加瀬康之さんがソフトな語り口で好演。80年代の米ドラマ「ナイトライダー」を見て育った世代には、スタークとジャーヴィスの関係がマイケルとキットの関係を連想させて、思わずニヤリ。上記の台詞はトニー・スタークが核爆弾を搭載したミサイルを、文字通り命がけで処理しようとする際に放つジャーヴィスの心憎いひと言。脇役の人工知能にまで見せ場を作るジョス・ウェドン監督の演出力は本当に最高!。
 
『キューブ自体が、動力源なんです』
宇宙物理学者エリック・セルヴィグ博士を演じるは、金子由之さん。
いわゆる脇役である地味なキャラクターではあるけれど、こうした役をきちんと演じる事が作品にとっては結構重要だったりするものです。いわゆる“博士”のようなキャラクターは専門用語が頻繁に使用されるため、演技に説得力が必要とされる訳ですが、金子由之さんの安定した演技がそれに応え、物語に深みを与えています。
 
 
今回は「アベンジャーズ」の日本語吹き替え版についてです。
この日本語吹き替え版、Amazonのレビューでも散々酷評されていましたが、皆さんはご覧になられたでしょうか?。まずオイラの率直な感想ですが、まずまずの出来だと感じました。もっとも、先にAmazonのレビューに目を通していたので、今回の吹き替え版に対する敷居が低くなっていた感はありますが、それでもそれなりに楽しんで見ることが出来ました。ただ、やはりいわゆる“御三方”の吹き替えは、お世辞にも最高!と言えるレベルではありませんでした。記事を読んで頂ければおわかりなように、今回オイラは敢えてその“御三方”の個々の吹き替えについては一切触れていません。もちろん吹き替えファンとして色々感じることはありましたが、あまりにも語りたい事が多かったため、今回はその点には触れないことにしました。竹中直人さん、米倉涼子さん、宮迫博之さんの吹き替えに関しては、後日〈中編〉にて、たっぷりと触れたいと思います。
 
御三方の吹き替えはいったん横に置いておきまして、今回の吹き替え版に関して個人的に感じたことをいくつか挙げてみたいと思います。あくまでもオイラの個人的な感想です。
 
【ロキの狡猾さと邪悪さ】
まずは、やはり平川大輔さんのロキが、ちょっと残念な出来でした。
コンプレックスを持つソーの弟という側面はそれなりに表現出来てはいたものの、やはりロキの持つ邪悪さや狡猾さの表現という意味では今ひとつの感が強かったです。これはブラック・ウィドウとのやりとりの場面に於けるトム・ヒドルストンの演技と平川大輔さんの演技を見比べて見れば一目瞭然です。平川大輔さんの演技は、はっきり言ってトム・ヒドルストンの演技に迫力負けしているし、それは=ヒドルストンの演技を踏襲出来ていないという事でもあります。このあたりはもっと厳しく演出して欲しかったです。
 
【フィル・コールソンにとってのキャップとは!?】 
気になったのが、フィル・コールソン捜査官のキャプテン・アメリカに対する接し方です。劇中を見ればわかるように、フィル・コールソンにとってキャプテン・アメリカは憧れの存在です。更に見た目はフィル・コールソンの方が年上ですが、実際にはスティーヴ・ロジャースの方がはるかに年上です(だからトニー・スタークはキャップのことを“おじいちゃん”とからかっている)。当然、フィル・コールソンの言葉使いは敬語になって然るべきなのに、そうなっていなかった吹き替え(&字幕)台本にちょっと違和感を覚えました。そういった表現こそが日本語の得意とするべき点だし、吹き替えだからこそ出来る演出だと思うのです。そうした表現がとられていなかった点が残念でした。
 
【“ギャラガ”って知ってますか?】 
トニー・スタークがヘリキャリアに現れる場面で、乗組員のひとりにこう語りかけます〜
「そこ、ギャラガやってるだろ?、バレないと思った?」
“ギャラガ”と聞いてそれが即ゲーム名である事がわかる人は、かなりのゲーム通だと思います。しかしギャラガという名前は、日本に於いて“マリオ”のように一般認知度が高い名前ではありません。“ギャラガ”とはオリジナル音声の直訳ではありますが、ここは意訳して〜
「そこ、TVゲームやってるだろ?、バレないと思った?」
ぐらいで良かったように思います。昨今の吹き替え版はオリジナル言語に忠実に訳さなければならなくなったと聞いていますが、これぐらいの意訳は許容範囲だと思います。
 
【キャップは優等生である】 
一方、「吹き替えだからこそ!」の良い演出もありました。
アベンジャーズの面々が衝突するヘリキャリア内での場面。ニック・フューリーの策に憤りを感じ始めたブルース・バナー博士が無意識にロキの杖を掴んで、現場に緊張感が張りつめます。ここでキャプテン・アメリカがブルース・バナー博士にこう諭します....
 
「バナー博士、杖を置いて」(吹き替え版)
「バナー博士、杖を置け」 (字幕スーパー版)
 
同じ意味の言葉でも、表現方法によってイメージは随分と変わるものです。
字幕スーパー版の台詞だと、キャップがとても高圧的に感じられて、優等生であるキャップのイメージとは随分とかけ離れた印象となっています。一方、吹き替え版の台詞は、キャップの紳士的な部分を的確に表現しており、中村悠一さんのソフトな音声とも相まって、こちらがよりキャップらしい台詞になっていました。わずかな表現の違いですが、キャラクターの性格に関する台詞であり、ここは吹き替え版の方が勝った見事な演出でした。
  
 
今回の「アベンジャーズ」日本語吹き替え版、御三方の吹き替えはともかく、その他の皆さんの吹き替えはそれなりに素晴らしいものでした。しかしながら、演出的に不満を感じる部分もいくつかあり、そういった意味では決してベストではなく、ベターな出来でした。作品自体が素晴らしかっただけに、吹き替え版にもそれに応えるクオリティを期待していたのですが、残念ながら少々不満が残るものとなってしまった「アベンジャーズ」の吹き替え版でした。
次回〈中編〉では、いよいよ御三方(竹中直人さん、米倉涼子さん、宮迫博之さん)の吹き替えについて語りたいと思います(^皿^)
 
 
    本作吹き替え版の最優秀演技賞は、本田貴子さんに決定!
     マリア・ヒル.jpg 
マリア・ヒル捜査官を演じるコビー・スマルダーズが本当にかっこいい今作。
例えば、ロキに操られたホークアイに撃たれそうになった時に見せる前転の力強い美しさ、その後のジープに乗る時の颯爽とした美しさ、撃たれそうになったニック・フューリーをカバーする際の射撃の凛とした美しさ、....etc。そうしたマリア・ヒルのかっこ良さを忠実に再現している本田貴子さんのお芝居が本当に素晴らしい!。マリア・ヒル捜査官はいわゆる脇役ではあるけれど、こうした役を実力派が演じる事で作品全体がしまるという、吹き替えの好例となっています(^皿^)b。

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藤原啓治さん&宮内敦士さん共演と言えば、忘れちゃいけないこの作品。
お二人を始めとする声優陣の演技が最高に素晴らしい「シンドバッド」。
オイラはこの作品がきっかけで、宮内敦士さんの大ファンになりました。
海外アニメーション作品として日本では今いち知名度の低い今作ですが、実は隠れた名作なので未見の方には是非見て頂きたい一品です。ぶっちゃけ「パイレーツ・オブ・カリビアン」よりも数倍面白い海賊映画です♪(^皿^)
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通りすがり

エンディングでインタビューに答えている女性を演じてる声優は東條加那子さんという方だと思います。海外ドラマや洋画の吹き替えを数多くこなしてる人です。ただ、絶対そうだと言い切れる自信は無いので間違っていたらごめんなさいw
by 通りすがり (2013-05-24 20:46) 

堀越ヨッシー

通りすがりさん、はじめまして。
そして、貴重な情報ありがとうございます!!(^皿^)/
あのウェイトレスの声は東條加那子さんだったんですね♪。
東條加那子さんと言えば、「ドラゴン・タトゥーの女」でルーニー・マーラの声を演じてるそうですが、そちらはまだ未見なので必ずチェックしなきゃですね。
本当にありがとうございました!!
by 堀越ヨッシー (2013-05-25 08:42) 

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