定番のホラー映画と思わせて実は....!?〜「キャビン」を鑑賞する [映画鑑賞]
『 父が泣き叫ぶ母の腹を裂き石炭を詰めた
兄は肉を切り刻むと興奮するらしい
私の腕は食いちぎられた
私も痛みを与える喜びを感じられたらいいのだけれど.... 』
〜アナ・ペイシャス・バックナーの日記より〜
『キャビン』【原題:THE CABIN IN THE WOODS(森の山小屋)】
2012年 アメリカ映画 95分 字幕監修:町山智浩
監督:ドリュー・ゴダート
脚本:ジョス・ウェドン&ドリュー・ゴダート
音楽:デヴィッド・ジュリアン
出演:【若者たち】
デイナ ....クリスティン・コノリー
カート ....クリス・ヘムズワース
ジュールス ....アンナ・ハッチソン
マーティ ....フラン・クランツ
ホールデン ....ジェシー・ウィリアムズ
【研究所の人たち】
シッターソン....リチャード・ジェンキンス
ハドリー ....ブラッドリー・ウィットフォード
リン ....エイミー・アッカー
トルーマン ....ブライアン・ホワイト
他
【あらすじ】
週末の休暇を楽しむために、人里離れた山小屋へとやってきた若者男女5人。だが楽しい時間も小屋の地下室で古びた日記を発見したことで一変する。日記の持ち主は、かつてこの小屋の持ち主だったバックナー家の末っ子アナが残したもので、そこにはバックナー家の闇の部分が記されるとともに、復活の呪文が添えられていた。その復活の呪文を何気なく唱えてしまった若者たち。すると地下より邪悪なバックナー家が甦り、若者たちを襲い始めた!。
一方、ところ変わってここはとある研究所。研究室の所員たちはモニターを見つめている。モニターに映し出されていたのは、山小屋を訪れていた5人の若者たちである。バックナー家の亡霊によって、ひとり、またひとりと犠牲になっていく若者たちの様子を淡々と見つめる所員たちがつぶやく。「よし、計画通りだ。これでクライアントも喜ぶぞ。」
彼らの正体は!?、そして若者たちを監視する理由はいったい何なのか!?。
やがて若者たちを取り巻く驚愕の事実が判明する....!!
いやー、久しぶりに面白いホラー映画でした!(^皿^)/
....っていうかコレ、“ホラー映画”というジャンルに果たして入れて良いものかどうか?。
それくらい非常に個性的でユニークな作品でした。
物語はお決まりのホラー映画風にスタートします。
舞台は人里離れた山小屋。ホラー映画ではお馴染みのキャラが、お約束のように過去の亡霊を甦らせ、お約束のようにひとりまたひとりと殺されていきます。正にホラー映画定番の展開そのものです....っていうか、まんま「死霊のはらわた」デス(^皿^)。
ところがそれと並行して描かれる研究所の人たちの様子が気になります。
惨劇に見舞われる若者たちをモニター越しで横目に観察しながら、それを深刻に受け止める風でもなく和気あいあいと業務をこなす研究所の人たちは、とても奇異です。若者たちの様子と研究所の人たちの様子との間に生まれるギャップに終始モヤモヤしたものを感じながら鑑賞することになる「キャビン」。
彼らの正体はいったい何なのか?、その目的はいったい何なのでしょう?。
これはいわゆる「トゥルーマンショー」や「ハンガーゲーム」の残酷版なのでしょうか?。それとも若者たちは実はロボットで人工知能のテストでも行っているのでしょうか?。そんな様々な想像を膨らませながら鑑賞することになる「キャビン」。こんなに頭をフル回転させながら見るホラー映画は初めてでした(苦笑)。
でも、結果的に自身が想像していたものはどれもハズレでした。若者たちの身に起こることはどれも事実ですが、残酷ショーのネット中継などではなく、ましてやバーチャルゲームの類いでもありませんでした。
では....果たして彼らの正体はいったい何なのでしょうか?。
【ここから、がっつりネタばれします!】
実は、若者たち男女5人は生け贄として捧げるために選ばれた者たち。
では、誰に捧げるための生け贄なのか?....それはこの地球に太古の昔から存在する邪神に対しての生け贄なのでした。地球上のありとあらゆるものを破壊し滅ぼすだけの力を持った邪神。しかし、その邪神も今は地下で静かな眠りについています。それは定期的に生け贄を捧げていたおかげであり、研究所の職員たちは生け贄が無事滞りなく神に捧げられるように監視・操作していた組織だったのです!。
そして、ここからが今作のユニークなところです。邪神に捧げる生け贄の血は、特別なものでなくてはなりません。それにはただ殺すだけではダメで、苦痛と恐怖を与える必要があります。そこで利用されるのが、この世に存在する悪しきものたち....すなわち怪物たちです。
映画の後半、バックナー家の亡霊たちから逃れたデイナ(クリスティン・コノリー)とマーティ(フラン・クランツ)は、研究所へと続く秘密の地下通路を発見、そこから研究所へと進入します。そこで2人が見たもの....それは古今東西様々な怪物たちが幽閉・隔離・管理された姿でした。透明な四角い箱に入れられた怪物たちが大挙して登場する場面は実に圧巻で、怪物好きのオイラは別の意味で悲鳴を挙げていました(^皿^)/。ざっと挙げると....
ウルフマン、巨大な動物たち(蛇・蜘蛛・ムカデ・こうもり、etc)、半魚人、ゴースト、悪霊、ゾンビ、ピエロ殺人鬼や殺人ドクターらのシリアルキラー、動く大木、ユニコーン(この作品ではユニコーンさえも人を襲う!)、機械仕掛けのロボット(似たヤツが「シュガー・ラッシュ」にも出てます!)、仮面を被った謎の集団、双子の姉妹(「シャイニング」のあの子たち!)、ヘルレイザー風の魔導士、などなど....。
その数はあまりにも膨大で、全部確認するのはほぼ不可能でした。
このあたりは是非ソフト化された時に全怪物のデーターを掲載して欲しい!。
この膨大な怪物の中から、生け贄となる対象者は自らが襲われる怪物を選択することになります。今回バックナー家の亡霊が選ばれたのは、若者たちが地下室で古日記を手に取ってしまったから。実は地下室にあったものは、それぞれがそれぞれの怪物に関連したアイテムであり、それによって生け贄を襲う怪物もまた変わってくるのです(貝殻→半魚人、キューブ型のパズル→魔導士、オルゴール→バレリーナの怪物、etc....)。研究所の人たちがこれを賭けの対象にして楽しんでいる姿は、かなりのブッラクユーモアでした。
そして、ここから怒濤の展開を見せることになる「キャビン」。
研究所の人間たちによって殺されそうになるデイナとマーティは反撃にうってでます。幽閉されていた怪物たちを解放するのです!。独房から解放された怪物たちは、研究所の人間を次々と襲っていきます。それは正に阿鼻叫喚の地獄絵図。研究所内部は瞬く間に血まみれとなっていきます。ユニークなのは、怪物同士で決して争うようなことはないということ。
皆それぞれ人間だけを襲う律儀さ、正に怪物の鏡です!(^皿^)/。
さて、遂に研究所の責任者(サプライズゲストは長年宇宙生物と戦ってきたあの人!)と対峙することになるデイナとマーティ。そこで究極の選択を迫られることになる二人。このまま生き延びて人類全員とともに邪神に滅ぼされるか?、それとも人類を救うために生け贄として死ぬべきか?、その結果は果たしていかに!?。それは是非ご自身の目で確かめて下さい。因みにこのユニークな脚本を手がけたのは、あの「アベンジャーズ」を世に送り出して我々アメコミファンを熱狂させたジョス・ウェドン監督。今ハリウッドで最も信頼出来る男が手がけた脚本だけあって、その面白さは保証付きです。
ホラー映画として久しぶりに面白さを味わった「キャビン」。
無論全編にわたり血まみれシーン続出で、そういったものが苦手な方もいらっしゃるでしょうが、それを理由に避けるにはあまりにも惜しい、それくらい面白い作品です。
是非是非、劇場で鑑賞して下さい、お薦めです!(^皿^)/。
劇中、特に強い印象を残すバレリーナ・モンスター

見た目は少女のバレリーナそのものなのに、振り返るとその姿は....ガーン!、なんと口だけの顔だった!(T皿T)。日本でいうところの“口裂け女”なバレリーナ・モンスター。
解放された怪物たちが一様に人間を襲う中、ただ一人くるくると優雅に舞うだけのバレリーナ・モンスター。その姿が逆に不気味で恐かった....(^皿^;)。
ところで、この研究所は世界各地に支部があり、その中で日本の場面が出てきます。
舞台は小学校。女の子たちの前に現われたのは、貞子とトイレの花子さんを足して2で割ったような悪霊。その姿に女の子たちは恐怖に震えます。女の子たちは生け贄となってしまうのでしょうか?。ですが、女の子たちは力を合わせて悪霊を退治します。悪霊を取り囲むと聖なる歌(童謡!)でその魂を浄化していきます。やがて、力を失った悪霊はカエルの中に閉じ込められて一件落着!(どんな話だ!?)。
つまり、日本支部は生け贄を捧げるのに失敗した....というオチです。その様子をモニター越しに見ていたリチャード・ジェンキンス扮するシッターソンが「このクソガキども!」とマジ切れする姿が爆笑ものでした(^口^)。

モンスター大図鑑 (ネコ・パブリッシングのビジュアルガイドブック)
- 作者: ジョン・ランディス
- 出版社/メーカー: ネコ・パブリッシング
- 発売日: 2013/01/26
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
モンスター大好き!(^皿^)/

The Cabin in the Woods: The Official Visual Companion
- 作者: Joss Whedon
- 出版社/メーカー: Titan Books
- 発売日: 2012/04/17
- メディア: ペーパーバック
シナリオ本が出てたので、思わず衝動買い!(^U^)♪
無論、洋書なので英語表記につき、内容はチンプンカンプン(泣)。
冒頭のドリュー・ゴダード監督と脚本ジョス・ウェドンのインタビュー記事が読めたら最高なんだけどなあ....トホホ(T皿T)。メインは当然シナリオな訳だけど、メイキング写真や劇中写真も満載の写真集的内容となっています。巻末にはちょっとだけモンスターたちが掲載されており、バックナー家のゾンビやバレリーナ・モンスターも載ってますよ♪
コメント 0