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最初から最後まで歌いっぱなし!〜「レ・ミゼラブル」を鑑賞する [映画鑑賞]

話題のミュージカル映画「レ・ミゼラブル」を鑑賞してきました。
オープニングから迫力ある音楽と歌で幕を開けた本作品。
壮大で重厚な物語の幕開けに「こりゃあ、かなり期待出来るかも!?」と感じたのも束の間、この後ジャン・バルジャンの如き苦行が、まさか自身にもふりかかることになろうとは、この時はまだ想像もしていなかったのであります...(^皿^;)。
 
 
       『レ・ミゼラブル』(原題:Les Miserables )
         2012年 イギリス映画 カラー 2時間38分
 監督:トム・フーパー
 原作:ヴィクトル・ユーゴー
 出演:ヒュー・ジャックマン .  ...ジャン・バルジャン
    ラッセル・クロウ     ....ジャベール警部
    アン・ハサウェイ     ....ファンティーヌ
    アマンダ・セイフライド  ....コゼット/フォンティーヌの娘
    ヘレナ・ボナム=カーター ....マダム・テナルディエ/コゼットの里親
    サシャ・バロン・コーエン ....テナルディエ
    エディ・レッドメイン   ....マリウス/コゼットに想いをよせる青年
    サマンサ・バークス    ....エポニーヌ/テナルディエの娘
    他
  
【あらすじ】
ひと切れのパンを盗んだ罪で投獄されたジャン・バルジャン(ヒュー・ジャックマン)は、長い刑期を終え、遂に仮釈放を得た。罪人に対して冷たい視線をおくる刑務官のジャベール(ラッセル・クロウ)に見送られ、遂に自由を手に入れたジャンだったが、元囚人である彼に世間の風は冷たかった。やがて流浪の旅の末、行きついたとある町の教会で、ジャン・バルジャンは出来心から銀食器を盗んでしまう。だが、教会の司祭はそんなジャンを警察に突き出すどころか、優しく接するのだった。初めて人間らしい扱いを受けたことに深く感銘したジャンは、人生をやり直すことを強く決意する。こうして、ジャン・バルジャンはジャベールに手渡された身分保証状を破り捨て、別の人間として生まれ変わる。
 
それから数年後....そこには市長にまで上り詰めたジャン・バルジャンの姿があった。
マドレーヌと改名したジャンは市民に慕われる市長として忙しい日々を過ごしていた。そこへ新しい警部としてひとりの男が赴任してきた。それはかつて刑務官だったジャベール。当初はマドレーヌ市長がかつて仮釈放中に逃亡したジャン・バルジャンだと気がついていなかったジャベール警部だったが、やがてその正体に気付くのだった。
こうしてジャン・バルジャンは再び警察に追われる身となってしまう....
 
 
いやー、疲れた、本当に疲れた!(^皿^;) 
前評判通り、歌や音楽は本当に素晴らしいものでした。オープニングから泣いちゃったもんね、感動して(^皿^;)。物語のオープニング、ヒュー・ジャックマン演じるジャン・バルジャンが囚人として強制労働に従事する場面で幕を開けます。物語早々にジャベールとの緊迫感溢れるやりとりが展開され、壮大でダイナミックな映像と音楽が披露されます。それに圧倒され、早くも感動の渦に巻き込まれるオイラ。その場面が終わり、ようやくひと息つけるかな?と思ったのも束の間、この後次から次へと、素晴らしい歌や音楽が延々とつづくことになります。そう、この映画、全編ほぼ歌だけで構成されたミュージカルだったのです。そのことをまったく知らなかったオイラは、ちょっと驚いてしまいました。オイラは舞台版は未見なので詳細はわからないのですが、舞台を見たことがある知人に話を聞いてみたら、舞台版もほぼ歌で構成された作りになっているとのことでした。ということは、舞台版にかなり忠実に作られている映画ということなんですね。
 
ひと口に“ミュージカル映画”と言っても様々なタイプのものが存在します。
オイラが好きなミュージカル映画は、例えばオイラの中でマスターピースである「コーラスライン」のように歌や踊りはもちろんですが、同時に台詞劇のドラマがきちんと描かれた作品が好みです。そういった意味でいうと、今作はそうした台詞劇の部分がほぼ皆無で、そのことにちょっと残念さを感じてしまったのです。
ミュージカル映画における歌やダンスというのは、いったい何なのでしょう?。
登場人物の喜怒哀楽の感情が、ある沸点に到達したときに溢れ出す気持ちを、歌やダンスで表現させるのがいわゆるミュージカル的演出です。だから、まず大前提として台詞劇があって、その中にスパイスとして歌やダンスがある....そんな作りのミュージカルが好きです。「ハイスクール・ミュージカル」もそう、「glee」もそう、ここ一番!という場面で歌やダンスが披露されるから、見ているこちらも登場人物と同じような気持ちで感動出来るのです。そして、そんな歌やダンスの場面に感情移入出来るのは、それ以外の部分....すなわち台詞劇のドラマ部分があってこそなのです。
ですが、本作品はその部分、すなわち普通の台詞のやりとりまでもが歌で構成されています。「コーラスライン」的ミュージカルがベースのオイラとしては、その点がどうにもしっくりとこなくて釈然としませんでした。これってミュージカルではなく、むしろオペラなのでは?....そんな感情を強く持ってしまいました。
 
例えば、アン・ハサウェイ演じるファンティーヌが「夢やぶれて」を歌う場面。
人生が転落してしまったファンティーヌが「こんなはずではなかったのに」と、その思いをせきをきったかのように歌いだすこの場面は、本作の見所のひとつで大きな感動を呼ぶ場面でもあります。演じるアン・ハサウェイの歌声は本当に素晴らしいもので、本来であるならばものすごく感動して然るべき場面です。ですが、正直言ってオイラはそれほどの感動は押し寄せてきませんでした(もちろん、泣きはしましたけど)。何故なら、この場面に向かうまでの部分、すなわちファンティーヌが転落していく過程までもが歌で構成されていたからです。
確かに工場での出来事や娼婦たちが歌う場面もそれなりに素晴らしいものでした。だけど、どうしても歌で描く必要があった場面だったか?と言えば、それほどの必然性は感じられませんでした。むしろファンティーヌが人生を転落していく様を普通のドラマとして淡々と描いた方が、ここぞ!という場面で披露される「♪夢やぶれて」での歌唱場面がより引き立って感動が盛り上がったのにと強く感じました。ひとつの箇所を盛り上げるためには、いわゆる“タメ”の部分が必要不可欠なのです。
 
「全編歌で構成されているだなんて、なんて贅沢な作品だ!」
そんな見方も出来るかもしれません。ですが、オイラは別に“レ・ミゼラブル歌謡ショー”が見たい訳ではありません。ドラマ!....ドラマが見たいのです。本作品を見ながら「もったいないなあ」と強く感じたことがあります。せっかくオーストラリアを代表する2大俳優が画面上で相対しているのに、台詞劇のやりとりが見られないなんて、これは本当にもったいない。
例えば、ヒュー・ジャックマン演じるジャン・バルジャンのもとに、ラッセル・クロウ演じるジャベール警部が赴任の挨拶に来る場面。ジャンはジャベールの事に気がついているにも関わらず、ジャベールは目の前にいる男がかつて囚人だったことに気がついていない....観客側からすれば、非常に緊張感の高まる場面です。ですが、こんな場面ですら「♪今度赴任してきたジャベールです〜」みたいに歌で演じられると、ドラマとしての緊張感が薄くなってしまいます。歌で構成する必要のない場面ですら歌で構成されている今回の「レ・ミゼラブル」。そのことを贅沢だと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、オイラにはどうにも過剰だと感じざるを得ませんでした。
 
今回の作品、おそらく舞台版にかなり忠実に作られているんだと思います。
しかし、映画と舞台はまったく別物です。舞台には舞台の、実写映画には実写映画の、それぞれに適した演出方法があるはずです。もし、舞台と同じ演出方法をとるならば、わざわざ実写で撮る意味がありません。それならゲキシネのようなスタイルで充分事足ります。
 
繰り返しになりますが、今作の歌や音楽は本当に素晴らしいです。
ですが、本来演出方法のひとつとしての歌が、延々と続くスタイルはやはり違和感を感じずにはいられませんでした。アクション映画で例えるとわかりやすいと思います。アクション映画を盛り上げる要素....派手なアクションや激しい銃撃戦、手に汗握るカーアクションや度肝を抜く爆発シーンなど、それらが要所要所でちりばめられているからこそ、アクション映画は盛り上がるのです。これが休むことなく延々と続くアクション映画だったとしたら、見ている側も疲れてしまいます。今作「レ・ミゼラブル」に於いても、同様なことが言えると思います。どんなに素晴らしい歌や音楽であっても、それが延々と続くとなると感動よりも苦痛を感じてしまいます。どんなに美味しいご馳走も、立て続けて食べたら美味しさは半減してしまうものです。
オイラは映画に何を求めて鑑賞するのか?....それはドラマを見るために鑑賞するのです。
アクション映画然り、コメディ映画然り、サスペンス映画然り、ホラー映画然り....どんなジャンルの映画であれ、オイラがその作品に求めるものはドラマです。そして、ミュージカル映画に関してもそれは同じです。ミュージカル映画にとって歌や音楽はとても大事な要素ですけど、それ以前に大前提としてドラマを見たいのです。ミュージカル映画に於ける歌や音楽は、そのドラマを盛り上げるためのひとつの要素でしかありません。それがドラマを押しのけて前面に出て来たのだとしたら、それは本末転倒だとはいえないでしょうか?。
 
重ね重ねになりますが、本作「レ・ミゼラブル」の歌や音楽は本当に素晴らしいものでした。歌や音楽それ自体にはとても感動しました。しかし、ひとつの映画作品として俯瞰から見た時、全編が歌で構成され、それが前面に押し出してくるように作られた今回のミュージカルは、ドラマとしてやはりちょっと消化不良を感じてしまいました。
オイラが映画を見終わって真っ先に感じたこと....それは、この同じキャストで歌のないドラマとしての「レ・ミゼラブル」を見てみたかったということでした。映画「ヒート」のロバート・デ・ニーロとアル・パチーノの二人のように、ヒュー・ジャックマンとラッセル・クロウの2大オーストラリア俳優がガチでぶつかる演技対決を見たかった!。
そんなことを強く感じた今回の「レ・ミゼラブル」でした。
 
 
     『私は....生まれ変わるッ!』
     ジャン・バルジャン.jpg
 
オープニングの囚人姿のヒュー・ジャックマンが本当に素晴らしい!。こうした汚い姿をきちんと描いているところが偉い。対して、ラッセル・クロウ演じるジャベールの青い制服がこれまた素晴らしい!。歌や音楽のみならず、衣装やセットなど美術関係の仕事が本当に素晴らしかった「レ・ミゼラブル」でした。
 
【おまけ】
  『あっしは、パンをほんの一切れ盗んだだけなんスよ〜』
   パンをひと切れ.jpg
  

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うつぼ

私もここまで全編歌だとは思いませんでしたが、これって舞台を忠実に再現、
って感じだと思います。舞台版は悲しそうで見たことないんですが。(^_^.)
舞台でもここまで歌だらけということはないと思いますが、舞台だと前編、
休憩、後編で3時間くらいあるので、歌にセリフもついてくるのですが、
映画は時間の制約があるのかな。(といってもこの映画、長いけど)
多分、この作品とかRENTとかは熱狂的なファンもいるので、かなり忠実に
作らないと、みたいなものがあるのかもしれませんね。
私はラッセル・クロウも歌が下手じゃないんだけど、他の人に比べると普通で
しかも真顔で歌っているのがちょっとおかしくなってしまい、出てくる度に
思わずくすっと笑ってしまいました。。
私自身はエポニーヌ役のサマンサ・バークスが気に入りましたよ。(^_^)
by うつぼ (2013-01-27 20:26) 

堀越ヨッシー

うつぼさん、こんにちは。
姐さんもご覧になられましたか!。ミュージカル舞台を数多く制覇されているうつぼさんは、てっきり舞台版もご覧になられたと思って、舞台版についてお聞きしようと思っていたんですよ(^皿^)。
 
作品としては決してつまらなかった訳じゃなかったんですけど、とにかくゲップが出そうなくらい歌満載で、満腹状態のまま劇場をあとにした次第です。ぶっちゃけ、歌詰め込みすぎです!。
 
サマンサ・バークスの歌、良かったですね♪。
プログラムにラッセル・クロウのことが少しも触れられていなかったところに、クロウのチョイ悪な感じが垣間見れて思わずニヤリとしました(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2013-01-31 13:12) 

NO NAME

街中でさえ、人々が歌い始めると同時にオーケストラによる演奏が…
周囲の客席からはすすり泣く声が聞こえてくる中、私はと言えば、ありとあらゆる物陰に潜んでいるのか?と思われる楽団の姿を想像してしまって、笑いをこらえるのに必死でした。
死ぬ間際でさえ歌ってましたもんねぇ…
オーケストラの皆さん、演奏なんてしてないで助けなさいな、とか。
by NO NAME (2013-02-19 09:55) 

堀越ヨッシー

NO NAMEさん、はじめまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございました!。
by 堀越ヨッシー (2013-02-20 14:25) 

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