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人生という名の旅を続けよう〜「ファミリー・ツリー」を鑑賞する [映画鑑賞]

「ジョージ・クルーニーって、本当にいい役者になったなあ」
     
     クルーニー.jpg
     似てなくてごめんよ、クルーニー。オイラの画力じゃコレが限界ッ![あせあせ(飛び散る汗)]
 
 
「ファミリー・ツリー」【原題:The Descendants(子孫、末裔の意)】
  監督:アレクサンダー・ペイン
  原作:カウイ・ハート・ヘミングス
  出演:ジョージ・クルーニー
     シャイリーン・ウッドリー
     アマラ・ミラー
     ニック・クラウス
     ボー・ブリッジス
     ロバート・フォスター
     ジュディ・グリア
     マシュー・リラード
     他
  
  

「サイドウェイ」(04)のアレクサンダー・ペイン監督、実に7年ぶりとなる新作は、ハワイを舞台にしたとある家族の物語。弁護士であるマット・キング(ジョージ・クルーニー)は、先祖代々伝わる広大な土地の売買に頭を悩ませていた。土地を売買すれば自分をはじめ親族に莫大な資産が手に入るが、その一方で手つかずの大自然は失われてしまう....そんなジレンマを抱えるマットだったが、そこへ更なる問題がふりかかる。愛する妻が不慮の事故で昏睡状態へと陥ってしまったのだ。これまで仕事にかまけて家庭を顧みなかったマットは、妻の看病をしながらこれまでの自分の行動を反省し、より妻への愛情を深くするのだった。だが、マットは長女から驚くべき話を聞かされる。それは妻が浮気をし、尚かつ離婚を考えていたという事実だった。想像もしていなかった長女の告白に狼狽えるマットだったが、浮気相手が誰なのか?が気になって仕方がない。
こうしてマットは長女とともに浮気相手を探し出す旅に出る....
 

これまで数々の映画でかっこいい男を演じてきたジョージ・クルーニーが、
はじめて等身大の男を演じていることが話題の今作。
確かに、この作品での彼はダサい。信じていた妻には浮気をされ、娘たちには振り回されっぱなしで、義父からは事故のことを責められる始末。かろうじてお腹は出ていないものの、白髪の交じった眉毛や、アロハシャツをきっちりズボンに入れるスタイルなどは、正に中年オヤジそのもの。娘から妻の浮気を知らされた時、それを確かめるべく一目散へと友人のもとへ駆け寄る時のマヌケな走りっぷりといったらない。浮気相手を見つけた時も声をかける勇気もなく、ただあとを尾行する小心者ぶり。
これまで見た事のないジョージ・クルーニーの姿が、そこにはありました。
 
それでもやっぱり、ジョージ・クルーニーはかっこ良かった!。
友人夫妻から妻の浮気が事実だったことを知らされたマットが、ひとり橋の上で涙する時の背中からにじみ出る哀愁がたまらなく切ない。男たるもの、人前で泣いたりはしないのだ。或いは義父から「妻の事故の原因はお前にある」となじられた時も、反論したい気持ちをぐっと我慢して耐える姿が愛おしい。男たるもの、言い訳なんてしないのだ。そして極めつけは、クライマックスの妻との別れのキス。これは映画史に残る美しいキスシーンだと言いきってしまおう。ジョージ・クルーニーの眼から流れ落ちるひと筋の涙....これまでの妻に対する愛憎入り乱れる複雑な感情が、すぅーっと浄化されたような、そんな美しい場面でした。久しぶりに魂が揺さぶられる思いにかられました。
 
ジョージ・クルーニーの名演が光る一方、同じく素晴らしい演技を披露していたのが、長女アレクサンドラ役のシャイリーン・ウッドリー。見た目も美形(ビキニ、バンザイ!)だけど、思春期特有の不安定な姿を、とてもフレッシュに演じていました。最初は反抗的だった彼女が、徐々に父親に対して心を開いていく姿も素敵でした。
 
次女スコッティを演じたアマラ・ミラーも、すごく良かった。イメージとしてはディズニーの「リロ&スティッチ」のリロそのまんまだったけど、等身大の無邪気な感じが可愛らしくてたまらなかった。
 
母親役のパトリシア・ヘイスティに関してもひと言だけ。
出演場面はほぼ寝たきりのシーンなので、演技うんぬんはさておき、そのリアルな描写ぶりが印象的でした。例えば、映画の前半と後半では明らかにやつれかたが違っていて、それが病人としてとてもリアルでした。或いは、口端の汚れだったり、人工呼吸器をつけるため喉にあけた穴にかぶせたガーゼが汚れている感じとか、そういった細かな描写がとてもリアルで、それが看病の大変さを間接的に伝える見事なスパイスとなっていました。
   
そして、忘れちゃいけない長女のボーイフレンド・シド役のニック・クラウス!。
最初はオツムの弱い今風の青年という姿で笑わせてくれますが、単にそれだけの描写で終わらせないところがアレクサンダー・ペイン監督の素敵なところ。深夜マットと語り合う姿は、男同士の会話で素敵だし、クライマックスで病室を浮気相手の妻が訪れた際、さりげなく次女スコッティを外へと連れ出し、大人同士を二人っきりにする配慮をみせる憎らしさ。気がつけば、自身の中でとっても魅力的なキャラクターへと変貌しておりました。
 
 
アレクサンダー・ペイン監督が一貫して描いているのが、人間の持つ多面性。
今作の登場人物を見ていると、どんな人間にもいろんな面があって、決して単純ではないということを改めて考えさせられます。親と子、男と女、友人関係など、人と人がつき合うということは、ややこしいし、面倒臭い面も大いにあるけど、同時に素晴らしいものもたくさん得られる....そんなメッセージが伝わってきました。
 
 
エンディングが、これまた印象的で素敵でした。
母親が入院中に使用していたブランケット(ハワイアンキルト)に身を包み、テレビを見ている父娘3人。アイスクリームを分け合いながら食べる親子の姿が微笑ましい。だけど、3人の表情に笑みはない。見ている番組は、ドキュメンタリー映画「皇帝ペンギン」だそうだ。真剣な表情でテレビの画面を見つめる姿に、映画のナレーションがカブります。それがこれからの人生も決して楽にはいかないであろう事を暗示しているようで、とても深い余韻の残るエンディングでした。
 
 
どんな人間だって、人生という旅は大変な道のりだ。
ひょっとすると、嬉しいこと、楽しいことより、辛いこと、苦しいことの方が多いのかもしれません。それでも歩まずにはいられないのが、これまた人生なのですな。
たかが人生、されど人生。
折り返し地点はとっくに過ぎたけど、まだまだ人生という名の旅は続きます(^皿^)。
   

Descendants

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  • アーティスト:
  • 出版社/メーカー: Masterworks
  • 発売日: 2011/11/15
  • メディア: CD

全編に流れるハワイアンが、実に心地いい。
日曜日とかに、聞きたくなる1枚。

サイドウェイ [Blu-ray]

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久しぶりに、見たくなった♪(^皿^)
  

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コメント 4

うつぼ

私も観ました!って、ヨッシーさんも観ると思った!
(私は後手後手で来週あたりに記事アップ予定です)
私の場合、この役柄をポール・ジアマッティがやったら、リアル感が増して
作品として見たいけどどうかな、と思いましたねぇ。
この作品で出てくる人、すげー嫌な奴ていないと思うんです。
あの浮気相手も根っからの悪ではないし、日常のどこにでもありそうな、そんな話をうまく描いているようにも思えました。
アレックスのビキニ、、ヨッシーさん、萌えましたねぇ。(笑)
私はアホっぽいシドのダサい感じが気に入りました。(^_^)
by うつぼ (2012-06-18 22:07) 

堀越ヨッシー

うつぼ姐さん、こんにちは。
あー、それはオイラも思いましたね!、ポール・ジアマッティが主人公を演じたら、もっとリアルになるだろうと。でも、こうも思ったんですよね、ジアマッティだと浮気されても当然かなって(苦笑)。浮気されそうもないクルーニーだからこそ、べつの意味でリアル感も増したのかな?って。
アレックスのビキニには、本当に癒されました(^皿^)♪
by 堀越ヨッシー (2012-06-21 09:51) 

collet

はじめまして!
先日はお立寄りありがとうございます~^^;

ところで、似てますね~~!(^^)!
目元なんてソックリです!
でもって、ジョージ・クルーニーはいい役者になりました。
男50歳、これからですね!
素敵に老いて、色気のあるオジサンになってほしいです~(^'^)
by collet (2012-06-21 12:30) 

堀越ヨッシー

colletさん、はじめまして!。
こちらこそ、ご訪問&コメントありがとうございます。
ジョージ・クルーニーは、これから更にシブくなっていくこと間違いなしですね!。目指せ、第2のショーン・コネリー(^皿^)。
アレクサンダー・ペイン監督の次回作にも期待大です。....でも、また7年後ってのは勘弁してほしいですね(苦笑)。
by 堀越ヨッシー (2012-06-22 23:35) 

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