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友情は、国境や海、障害さえも越える〜「メアリー&マックス」を鑑賞する [映画鑑賞]

オーストラリア発のクレイアニメ「メアリー&マックス」を見てきました。
クレイアニメと言えば、最近では英国のニック・パーク監督作品「ウォレスとグルミット」が有名ですが、今作「メアリー&マックス」は、エンターティメントに特化した「ウォレスとグルミット」とはちょっと違い、描かれているテーマはかなりシリアスな内容とのこと。
果たしてどんな物語なのでしょうか?。
 
 
『メアリー&マックス』(2008豪/94分/原題「Mary & Max.」)
  監督:アダム・エリオット
声の出演;トニ・コレット(メアリー)
     フィリップ・シーモア・ホフマン(マックス)
     エリック・バナ(ダミアン)
     他....
【あらすじ】
まだ携帯電話もインターネットもなかった頃のお話。
オーストラリアのメルボルン郊外に住むメアリーは8歳の女の子。
父親は仕事と趣味に夢中で家庭を顧みることはなく、万引き癖のある母親は極度のアルコール依存症だった。そんな両親のもとで生活するメアリーは、とても孤独だった。額にあるウンチ色の痣(あざ)のおかげで学校ではいじめられる始末。寂しい思いを日々募らせるメアリーは、“本当のともだち”を求めて文通することを試みる。相手に選んだのは異国のアメリカ人。電話帳から面白い名前をしているという理由だけで選んだ人物だった....。
一方、ところ変わって米はニューヨーク。この街で暮らすマックスは、アスペルガー症候群という病に苦しみつつ、孤独な生活を送る44歳。ある日のこと、彼の元にオーストラリアから一通の手紙が届いた。差出人はメアリーという8歳の女の子。思いもしなかった手紙に激しく動揺するマックスであったが、散々悩んだ挙げ句、思いきって返信の手紙を書くことを決意する。なぜなら彼もまたメアリー同様友達を欲していたのだ。
かくして8歳のメアリーと44歳のマックスという、奇妙な関係の文通が始まった....
 
 
最初にこの映画を見ようと思ったきっかけは、もう理屈抜きで人形アニメーションが大好きだから。その理由をここで語ると映画の感想より長くなってしまうので割愛しますが、とにかくそれがまず一点。
そして二つ目の理由が、メアリーの容姿。黒縁メガネにダンゴ鼻、そして下ぶくれのほっぺと、彼女のデザインがもう個人的にかなりツボで(他人を見ているとは思えないその姿)、この愛らしいメアリーがどんな風に動くのかと思うとそれだけでワクワくして、とにかく見るのを楽しみにしていた作品でした。しかし、今作「メアリー&マックス」は、その愛らしい登場人物やクレイアニメの持つほのぼの感とは裏腹に、描かれていたテーマはとてもシリアスなものであり、それがかえってこの作品をより印象深いものとしていました。
久しぶりに映画を見て「ズシン!」と心が響くのを感じました。
  
 
孤独な日々をおくる8歳の少女メアリーの視点から物語は幕を開けます。
彼女の日常が、ブラックユーモアを交えながら淡々と語られていきます。そして、メアリーは異国の人マックスと文通をすることになります。子供ならでは視点で疑問に思うことを率直にマックスに質問するメアリー。一方マックスもその問いかけに真摯に応えようとしていきます。このあたりまでは見ていてもほのぼのとしていて明るさに満ちています。
 
やがてメアリーが成長して大学生になったあたりから、良好だった二人の関係が少しずつ狂いだしていきます。メアリーはマックスが患うアスペルガー症候群のことをもっと深く理解したくなり、大学で猛勉強します。そして、マックスのことを研究材料にしてアスペルガー症候群に関する本を出版して売り出そうとします。もちろん、メアリーとしてはマックスに良かれと思っての行動だったのですが、これが結果的にマックスの怒りを買うことになってしまいます。二人だけの秘密だった文通が、断りも無く世の中に広められようとしている事実に、マックスは怒り狂い、その思いを手紙にしたためます。その手紙を読んで愕然とするメアリー。マックスの一番の理解者だと自負していた自分が、実は一番マックスのことを理解していなかったという現実に、メアリーは打ちひしがれてしまいます。
それからはもう、転落の人生。本の出版を停止し、何もかもやる気を無くしてしまった彼女の元からは結婚したばかりの夫までが去っていきます。謝罪の気持ちをしたためた手紙をマックスに送るも、返事はありません。やがて、母親と同じようにアルコールにおぼれるようになるメアリー。そして、遂には自らの人生を終わらせようとします。天井にロープをひっかけて、首をくくろうとするこの場面に名曲♪ケセラセラがとても印象的に使用されていて、この作品の見せ場のひとつとなっています。
 
一方、メアリーとの文通を止めてから、マックス自身も様々な体験をすることになります。
宝くじを当ててひと財産儲けたり、そうかと思えば死ぬ一歩手前まで病気が悪化して入院したりと波瀾万丈の人生を歩むことになります。そんなある日、マックスは路上のホームレスがタバコをポイ捨てする場面を目の当たりにします。かねてより街の浄化について人一倍関心のあったマックスは、つい怒り心頭になり、我を忘れてそのホームレスを攻撃してしまいます。そこでホームレスが呟いたひと言....
「ごめんよ(I'm sorry)」
という言葉を耳にして、ハッとして我にかえるマックス。そして同時に彼はメアリーからの手紙に添えてあった言葉「ごめんなさい(I'm sorry)」という謝罪の言葉を初めて受け入れる心構えが出来るのです。この場面は、マックスに於ける名場面となっていて、とても感動的な一コマとなっています。
 
メアリーが自殺しようとしていた正にその瞬間、メアリーの元に郵便物が届きます。
差出人はもちろんマックス。メアリーが好きだったアニメのフィギュアが同封されており、手紙には「君を許すよ。この人形はその証しだ」と書いてありました。マックスをアスペルガー症候群という病から救おうとしていたメアリーが、逆にマックスによって人生の助け舟を出されるという逆転の構図。この映画の最大の感動的シーンです。
 
ついにメアリーは人生をやり直すことを決意。
そのまず第一歩として、遂にメアリーはマックスと会うことを決意、渡米します。
そして、マックスの住むアパートに到着したメアリーを待ち受けていたものとは....
おっと、このクライマックスだけは明かせませんね。
このピリ辛な結末は是非皆さん自身の目で確かめて下さい。
 
 
今作「メアリー&マックス」は、ひょっとするとオイラ的今年ナンバー1の作品となるかもしれません。それだけ強い衝動を受けた作品でした。障害者との向き合い方や友達とはいったい何なのか?といった事についてあれこれ考えさせられる物語でした。もちろん単純にクレイアニメとしても楽しい作品となっていました。アクが強くなかなかマニアックな作品ではありましたが、是非多くの方にお薦めしたい作品です。
是非是非!(^皿^)/。
 
     メアリー・ディンクル.jpg
 
 
こちらは「メアリー&マックス」の劇場プログラム
RIMG0888.JPG 
おまけにポストカードまでもらっちゃいましたヨ♪。
このプログラム、¥1000という高価なものでしたが、それに見合う内容で大満足♪。
まずハードカバー造りであります。冒頭部分は絵本のような感じでストーリー紹介。
秀逸なのがエアメールの便せん風ページ。そこにメアリー、マックスそれぞれが書いた手紙が同封されているという凝った作りになっています(メアリーの涙で汚れた染みまで再現!)。他にアダム・エリオット監督へのインタビュー、撮影風景の写真、更には「メアリーをねんどで作ってみよう」のコーナーなど、バラエティに富み、なおかつ充実した内容でデザインもgood!と、言うところ無し!。映画ファンとしてこういうプログラムは大歓迎ですね!。発行/編集はエスパース・サロウというところで、デザインは潟見陽さん。
「イリュージョニスト」のプログラムを製作した人たちは、こういう優れた人たちの爪の垢を煎じてガブガブ飲むように!。
  
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dorothy

ヨッシーさんのメアリー完璧ですねー。さすがだっ!
本当に素晴らしい作品でした。終わってしばらく席が立てないぐらい決壊してしまいましたw
私もプログラム買いましたがポストカードはマックスでしたよ。メアリーのも欲しいなあ。
二人の手紙を見てまた泣きそうになってしまいました...。
私的年間ランキングベスト上位に来ること間違いナシです。
by dorothy (2011-05-23 00:48) 

堀越ヨッシー

dorothyさん、こんにちは。
オイラは劇場で前売り券を買ったんですが、そしたらタンブラーがおまけで付いてきましたヨ。受付のお姉さんが「2種のうち、1種類しか残ってないんですが...」と申し訳なさそうに手渡してくれたのは、予想通りマックス版タンブラーでした(やはり誰もが可愛いメアリー版タンブラーを欲しがるよね!)。
 
オイラもその昔若かりし頃、文通していた事があったので、そんな事を懐かしく思い出したり、ひとりでいるのが好きなオイラは孤独なマックスに妙な共感を覚える部分があったりで、思いのほか楽しめた作品でした。間違いなくオイラ的本年度ベスト3に入る映画ですね!(^U^)v。
 
余談ですが、オイラが劇場で見た時、小学生連れ(兄と妹)の家族が近くにいたんですが、映画の影響でその小学生が親に「どうしたら子供が出来るの?」とか質問したら親は何て答えるんだろう?と、ひとり内心ハラハラしながら劇場をあとにした次第です(^皿^)。
 
dorothyさんのレビュー、楽しみにしています!。
by 堀越ヨッシー (2011-05-23 19:18) 

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