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タチの悪い女に翻弄されて〜「イリュージョニスト」を鑑賞する [映画鑑賞]

「ベルヴィル・ランデブー」を見て、シルヴァン・ショメ監督のファンになった人も多いはず。かく言うオイラも、そんな中の一人です。そんなフランス人アニメ作家シルヴァン・ショメ監督の最新作「イリュージョニスト」が、いよいよ公開となりました。
「これは、是非とも観ておかねば!」と、先日はるばる六本木まで出掛けてまいりました。
今回の物語は老手品師と若い女性との交流を描いた作品だとか。原作はフランスの喜劇王(と言っても知らないけれど)ジャック・タチが書き下ろした短編。個性的な作風で知られるシルヴァン・ショメ監督、果たして今回はどんな世界を我々に見せてくれるのでしょうか?。
 
『イリュージョニスト』(英題:THE ILLUSIONIST)
監督・脚色・作曲・キャラクターデザイン:シルヴァン・ショメ
オリジナル脚本:ジャック・タチ
【あらすじ】
1950年代のパリ。時代から取り残された初老の手品師タチシェフは、それまで出演していた劇場を追い出され、今ではドサ回りの日々をおくっている。そんなある日、営業で訪れたスコットランドの離島でタチシェフはひとりの若い女性アリスと出会う。アリスは都会からやってきた老手品師を魔法使いと信じて疑わない。一方タチシェフも優しく接してくれるアリスに好感を抱いていた。そしてタチシェフが島を離れる日、アリスは密かに彼のあとを追って島を出る。そのことに驚くタチシェフだったが、追い返すことも出来ず、結局二人で暮らし始めることになってしまった。
こうして二人の奇妙な共同生活が始まった....。
 
 
シルヴァン・ショメの描く世界は、相変わらず美しい。
手描き風味を残した背景、個性的にディフォルメされた人物たちの滑らかな動き、それらと溶け合うようにさりげなく取り入れられるCG映像。それらが見事に融合した画は、「ベルヴィル・ランデブー」と同じく、とても魅力的なものでした。また、ほとんど台詞のない構成や淡々と進む物語はとても詩情的で、これまたいかにもシルヴァン・ショメらしい作風となっていました。
....ところが、ところがです。ちっとも物語の世界に入っていけません。
原因はわかっています.....そう、アリスです!
この女性キャラクター像のせいで、物語の世界へと全然没頭出来なかったのであります。
なぜかって!?....なぜならこの女性、実に不愉快極まりない人物だったからです。
この作品を見て、彼女に対して感情移入出来た人が果たしていたのでしょうか?。
オイラはとにかく、アリスを見ながら終始イライラしていたのです....。
 
 
まず、彼女がタチシェフのことを魔法使いだと信じこむという設定に無理があります。
いくら田舎育ちだからと言って、手品師を魔法使いだと信じ込むという設定は、彼女の年齢から言っても相当無理があるように感じました。
ですが、ここは100歩譲って彼女がタチシェフのことを手品師ではなく、魔法使いだと本当に信じていると仮定しましょう。だとしても、彼女物欲が激しすぎます!。あれが欲しい、これが欲しいとタチシェフに物をせびってばかり。そのくせ、自身はタチシェフのために何かをしてあげようという優しい気持ちがまったくないときています(最初にタチシェフのシャツを洗濯してあげるのも単に交換取引で物を得るためだし、後に共同生活の際、シチューを作ってあげるのも決して自発的な感情からとった行動ではない)。こんなに自分勝手で欲深い人物(石原都知事風に言うと、「我欲の固まり」)にどうやって感情移入しろというのでしょうか?、オイラにはとうてい無理でした。  
 
それでも、オイラなりになんとか彼女に対して好感を持とうと努力はしました。
例えば、彼女はいわゆる“オツムが弱い人”なのでは?と解釈してみました。
そう仮定すれば、あの歳で手品師を魔法使いだと信じて疑わない精神年齢の低さも理解できるし、己の欲望のままに行動するのもある程度納得がいきます。
でも、結局そうじゃなかった。
なぜなら、彼女は同年代の男性を相手に恋をするからです。着飾ってデートもします。
つまるところ、彼女は別に障害者という訳ではなく、年相応の普通の女性だったんです。
単に物を知らない無知な田舎者だったというだけで。
そのうえ、物欲は人一倍強いときている。
 
そうなったらもう、オイラにはお手上げですよ。
彼女に対して何の共感も出来ないし、好感も持てません。
ただひたすら、「タチの悪い女に捕まっちまったなあ」と、最初から最後までタチシェフに同情するしかありませんでした。ジャック・タチのオリジナル脚本をシルヴァン・ショメ自身が脚色したとのことですが、アリスの人間像をもう少しどうにか出来なかったものか?と、感じずにはいられませんでした。結末がハッピーエンドにならないことだけはある程度予測はしていましたが、なんとも後味の悪さだけが残った終わり方でした。
 
アニメとしての画作りは相変わらず最高に素敵だった「イリュージョニスト」。
でも、物語に関しては全然楽しめなかった今作でした。
(こういう物語を好むとは、ショメは相当ロマンチストなのかもね)
個人的には腹話術師のキャラが魅力的だったし、ウサギの動きはかなりツボでした。
今回物語としてはかなり不本意な出来でしたが、シルヴァン・ショメの作る画(え)はかなり好きなので、次回作に再び期待したいと思う。
 
 
純朴そうな顔をして、周囲の男を翻弄する....こういう女が一番タチが悪いッ!

     「アレも欲しいッ!、コレも欲しいッ!」
     アリス.jpg 
「イリュージョニスト」をご覧になられた方で、もしアリスに対して好感が持てるような、そんな解釈があれば、是非オイラに教えて下さい!。 
 
小言ついでにもうひと言!。
劇場プログラムが凝った作りになってまして、これがまた癇に障ったのであります。
封筒みたいなのに8枚綴りのミニポスターという仕様で、各ミニポスターの裏に映画に関する記事が記載されていました。記事の内容事態は特にたいしたこともなく、またミニポスターに使用されている映画のカットも特段素敵なものもありませんでした。
なのに¥800と割高!
たまに単館系の映画を見に行くと、こういった小洒落たプログラムを手にすることがありますが、こういうのホントやめて欲しい!。作り手だけが「ちょっとお洒落なものを作ってみました♪」と自己満足してるだけのプログラム。先日入手した「トゥルー・グリット」のプログラムとはまったく真逆の出来で、映画同様ほんとにがっかりさせられました。
オイラは「アートを気取って商売するヤツ」が、一番嫌い!なのです。
 
 
映画を見終わってもなんだかスッキリとしないモヤモヤ感。
この気分は、同じくおじさんと少女の交流を描いたクレイアニメ「メアリー&マックス」に吹き飛ばしてもらうことにしよう。 
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コメント 4

inuneko

彼女はほっぺにキスしてほしかっただけなんじゃないですかねぇ?コインじゃなくて。監督の次作は実写だそうでちとガッカリす。
by inuneko (2011-05-15 20:09) 

堀越ヨッシー

inunekoさん、こんにちは。
物語的にもう少しどうにかならなかったのかなあ....というのが正直なところですね。シルヴァン・ショメの画とか動きとかはもう最高に好き!なので、今後も期待はしているのですが....。
余談ですが、腹話術師の使っていた人形のフィギュアが欲しいですッ!。どこか発売してくれ!(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2011-05-16 20:54) 

inuneko

アレ、タダじゃないですか(笑)
by inuneko (2011-05-19 22:53) 

堀越ヨッシー

確かに!(笑)
by 堀越ヨッシー (2011-05-20 08:39) 

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