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自主制作映画コンペティションを観る [映画鑑賞]

地元の市民映画祭で開催された「自主制作映画コンペティション」を見てきました。
今年で第8回目を迎える(らしい)コンペティション。応募のあった100本以上の短編作品群の中から選ばれた14本の作品がスクリーンで上映されました。
以下は、作品の簡単な紹介と、オイラの独断と偏見による感想です。
 
「しあわせならたいどでしめそうよ」/監督:佐藤福太郎
父子家庭で育つ少女とホームレス(?)の男性との交流を描いた作品。
印象的な映像がところどころに見られたけど、それが物語としてはあまり意味をなしておらず、単なるポストカード風だったのが残念。少女とホームレス男性との交流も表面的で薄っぺらな感は否めなかった。
 
「湯のみに毛」/監督:小野山要
留学生ケンタロウは招かれた先でお茶をごちそうになる。が、いざ飲もうとした時、湯のみの中に髪の毛を発見!...飲むべきか飲まざるべきか?...ケンタロウはどうする!?。
全編フランス語による短編。オープニングもすごくオシャレだ。ストーリー的にはありがちな設定だけど、今いち盛り上がりに欠ける内容。もっとあたふたする場面が盛り込めるはずだし、ところどころに出てくるチワワの意味もよくわからん。音楽とかすごくおしゃれだったのに...残念。
 
「時効」/監督:具志堅浩二
とあるバス停で、時効を迎えた犯罪者と、それを追う刑事とのやりとりが繰り広げられる。果たしてその顛末とは...!?
犯罪者と刑事のやりとりが見応えアリでなかなか良かったけど、オチがいわゆる「世にも奇妙な物語」的でギャフンッ!。意外性を狙ったのかもしれないけど、安直すぎて逆効果だったね。あのオチのせいで作品全体の雰囲気が一気に軽くなってしまったヨ。アレはないよなー....もう全てが台無し[あせあせ(飛び散る汗)]
 
「渚の妖精たち」/監督:木場明義
3人のニューハーフたちによるロードムービー。海へと向かう3人に待ち受ける運命とは...!?
...って、別に何の運命も待ち受けてないんですけどね(^皿^)。こういうドタバタコメディ作品って登場人物の会話のやりとりが重要だと思うんだけど、もうひとつパッとしなかったな。ニューハーフの描き方がいわゆるステレオタイプだったのも、個人的にはマイナス点。いくらニューハーフでも普段着はあんな格好してないでしょ?。
 
「典子の夏」/監督:野村皓平
水泳選手だった女子高生典子のひと夏の葛藤を描いた青春ムービー。
すごく丁寧に撮られた作品で、個人的には好感が持てました。ただ審査員の方も仰ってたように、典子がどうして水泳に挫折したのかが明確には描かれておらず、主人公の葛藤に共感できづらい点が唯一のマイナス。
 
「SEMICONDUCTOR」/監督:飯塚俊光
かつて父親から虐待を受けていた二人の兄弟。兄は父を殺そうと画策し、弟はそれを阻止しようとする。父親の住むマンションでその帰りを待つ兄弟。やがて、父親が帰ってきた...
兄弟のやりとりがなかなか見応えがあって面白かった今作。ちとクドいかな?とも思ったけど、個人的には好きなタイプの会話劇。淡々と喋る兄と理性的な弟のズレた会話が心地良い。
ただ難点が二つ。兄の父親を殺そうとする動機の弱さがそのひとつ。虐待を受けていたという事実はあるにしても、今イチ殺人を志す動機づけとしては弱い。もうひとつは物語が中途半端に終わった点。この二つをクリアしていたら、より完成度は高くなったと思う。
 
「暴霊の橋」/監督:若林立夫
歩道橋の上で何者かに襲われた主人公。その犯人は女性...しかも幽霊だった!。果たして主人公は幽霊相手に助かるのか!?。
全14作品の中で、群を抜いてその個性が際立っていた今作。お話というお話は無いに等しく、ただひたすら主人公と幽霊の女性とが歩道橋上で格闘を繰り広げる...ただそれだけ(苦笑)。しかもバカ丁寧に主人公がお話の設定を説明口調で全部話してくれるという爆笑オマケ付き。
でもこういうバカ映画、嫌いじゃない。例え下らない内容でも沸点を越えたらそれはそれで面白くなるという良い見本。何より監督(主演も)の伝えたいメッセージ(ただアクションをやりたいッ!)が一番伝わってきたのが今作だった。頑張れ、監督!(^皿^)b。
 
「HORIZON」/監督:Artmic8neo
森に住むリュートは世界の果てを目指して旅に出る。旅の結末にリュートが目にするものとは...!?
全14作品の中で唯一のアニメーション作品。影絵チックなその絵柄はなかなか趣きがありグッド。物語的には手あかのついた目新しさのないものだったけど、それでも独特の絵柄が功を奏して雰囲気は良い。
しかしながら、今作の最大の欠点はナレーションによる語りが多すぎること。監督の主張したい事やメッセージなどが全て語りによって表現されている。でもそれって本末転倒なのでは?。アニメ作家なら伝えたいことは“絵(画)”で伝えなきゃ!。あれじゃあラジオドラマと変わりないし、アニメとしての意味がない。
 
「ちょぼ」/監督:高野雄宇
幽霊が見える主人公の日常を淡々と描いた今作。
幽霊の見せ方が結構凝っていて、個人的には好きな種類の作品。でも、幽霊が見えるという設定自体に目新しさはなく、設定もあやふやで中途半端なのはいただけない(多くの霊が白シャツ姿なのに、侍の幽霊だけは着物姿ってすごく不自然)。物語的にも起伏に欠けており、オチも特に印象が残る訳でもなく「ふ〜ん」といった感じで残念。何かしらのヒネリが欲しかった。
 
「なりゆきガンモ」/監督:鈴木農史
居酒屋で食い逃げをしようとした主人公は、親切な店の主人の好意で住み込みで働くことになる。そこで客のひとりである女性と恋仲になる主人公。だが、幸せな日々は長くは続かない...
全体的に荒削りではあるけど、作品全体に漂う空気は一番映画っぽくて良かった。誤解を恐れずに言うとまるで日活ロマンポルノのような感じだった(...って、日活ロマンポルノ見たことないけど)。主人公と女性のベッドシーンは見ていてとても切なく、またドキドキする感じが、見ていてとっても新鮮だった。主人公と恋仲になる女性の役者さんが普通っぽくて逆にそれがすごく良かった。
 
「ビタミンC」/監督:大山直記
高校生活に何の楽しみも見いだせない主人公。クラスメイトの女性に淡い恋心を浮かべながらも、その思いを素直に表現出来ない不器用な性格。そんな彼の心の葛藤を描く今作。
非常に丁寧な作品作りで好感が持てた作品でした。思春期特有の心の葛藤が、すごく共感を覚えられて素直に作品の中に溶け込めました。
ただひとつ気になったのが主人公の喫煙シーン。やたらタバコを吸う場面が出てくるんだけど、今の高校生はあんなに普通にタバコを吸ってるものなのか?。今はそんな時代なの?...主人公の喫煙シーンにはものすごく違和感を感じました。
いや、別に吸ってもいいんですよ、それが演出として必要だと思われるなら。ただ、オイラの学生時代には【タバコを吸う=反権力、大人への対抗意識】という図式があって、だからこそいわゆる不良はタバコを吸ってた訳です。でも、今作の主人公はいわゆる不良ではない訳で、そう考えると果たしてあそこまで何度もタバコを吸う場面を挿入する意味が果たしてあるのかな?なんて思ったりしました。
特に、浜辺でのラブシーンは残念だった。主人公がおもむろにタバコを出して吸おうとするシーンで、隣にいた女性がてっきり「タバコ止めなよ」って注意するものとばかり思っていたら、「私にも一本ちょうだい」って、それじゃあダメじゃん。そのあとキスシーンになるんだけど、全然ロマンチックじゃない。あそこは...
女性:「タバコ止めなよ」
男性:「いいじゃんか、別に」
女性:「だって、タバコ臭い人とはキスしたくないもん」
男性:「俺は臭くなんかないって!」
女性:「臭いに決まってるよ、あー臭い臭い!」
男性:「なら...試してみろよ」
女性:「...いいよ」 チュッ![キスマーク]
 
ってな展開なんじゃないの?(...あー、書いててすごく恥ずかしくなってきた[たらーっ(汗)]
まあ、主人公の過剰な喫煙場面はさておき、丁寧な作品作りには大いに好感が持てました。
 
「小さな世界」/監督:山本暁
絵本作家の主人公は、妻を亡くし一人息子を男手ひとつで育てている。愛する女性を失ったことで新作の絵本が描けない主人公。だが、息子はそんな主人公に絵本を読み聞かせてとねだるのだった...
ここにきて主人公のお芝居が急にグレードアップしたなと思っていたら、主人公を演じていらしたのがテレビや映画、舞台でも活躍中の俳優・津田寛治さんだった。
まあ津田さんの確かなお芝居はさておき、題名通り非常に小さな世界の物語に終始した感は否めない。良く言えば詩的だし、悪く言えばこれといった起承転結のない平坦な物語。物語っていうより、全体の単なる一部分を見せられたという印象。結果、特に印象に残るものは何も無しだった。
 
「DINNER」/監督:谷口慈彦
独り暮らしの寂しい生活をおくる主人公の女性。思いあまって彼女は出張ホストを呼ぶことに。手作りのカレーを作ってホストの到着を待つが、現れたのはホームレスのような男性だった...
今作の売りはとにもかくにも主人公の女性のキャスティングに尽きる。そういった意味では大成功してると思う。今作で主人公を演じる役者さんが非常に“味のある”役者さんで(苦笑)、見ていて楽しい作品でした。ただ、物語的には中途半端な感が否めず残念。あと、カレーが全然美味そうに見えなかった。あのマズそうなカレーも監督さんの意図だったのだろうか...?

「つるかめのように」/監督:手塚悟
どこの家庭にもある、日常の朝食の風景。親子3人でいつものように食卓を囲む家族。父がいて、母がいて、娘がいる。当たり前の日常...だが永遠に続く当たり前のことなど、ないのだ...
淡々とした物語なのに、そこに優しい空気の流れを感じるのは何故だろう。きっと幸せというものは空気みたいなもので、普段は意識しないものなんだと思う。それを失って初めて、自分は幸せだったのだと再認識することが出来る....人間って愚かだなあ。
でも、例え愛する存在を失ったとしても、それで終わりな訳じゃない。意思は引き継がれる...焦げ目のついたたまご焼きのように...
 
 
 
そして、全14作品の上映が済んだところで、審査員の方々による選評が行われ、受賞作品が決定されました。
 
最優秀作品賞/金賞〜「しあわせならたいどでしめそうよ」監督:佐藤福太郎
      /銀賞〜「ちょぼ」監督:高野雄宇
      /銅賞〜「暴霊の橋」監督:若林立夫
 
シネマグランプリ賞〜「なりゆきガンモ」監督:鈴木農史
観客グランプリ賞 〜「つるかめのように」監督:手塚悟

 
受賞した作品の中で「つるかめのように」以外は、どれもオイラ的には今イチだった感があったので、この選評にはちょっと意外でした。因みにオイラが観客グランプリ用に選評した作品は「典子の夏」と「つるかめのように」でした。2つとも丁寧な撮り方に好感が持てました。
なにはともあれ受賞した皆さん、おめでとうございました!。
 
個人的に感じたことは、ナレーションや台詞で物語を語る作品が多かったこと。それはメジャーな作品でも最近よく見られる傾向なんだよね。それってすごく便利な方法でついつい安易に手が伸びがちな手法なんだけど、諸刃の剣だし、何より作品がつまらなくなる。映画ってのはやはり“画(え)”で物語を伝えなきゃ!。
それと、物語の一部分だけを切り取って見せています的な作品も目についた。それでももちろん構わないんだけど、やはり最低限の起承転結は必要だと思う。限られた短い時間だからこそ、表現出来る物語もある訳で、そういった意味では脚本が全体的に荒かった。
結局のところ画(え)も脚本作りも重要!という結論に至る訳で、総じてあと一歩、あと一工夫ですごく面白くなったのに...と思わせる惜しい作品が多かったですね。
 
でも、どの作品からも映画に対する熱い情熱は伝わってきて、それはすごく嬉しかった。いつの日かこの中から日本を代表するような映画監督が生まれて欲しいな、と思った「自主制作映画コンペティション」でありました(^皿^)。


    ビーナス.jpg
 
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