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3種類目の吹き替え誕生!「バットマン・ビギンズ」金曜プレミアム版 [吹き替えについて]

「ダークナイト」公開前夜に「バットマン・ビギンズ」を地上波放送するなんて、フジテレビもニクいことやってくれるじゃないの!。しかも今回の放送は吹き替え新録バージョン。さて、どんなメンバーが集まったかな?。
 
ブルース・ウェイン/バットマン. . . 高橋広樹
執事アルフレッド. . . 岩崎ひろし
ゴードン刑事. . . 大塚芳忠
ヘンリー・デュカード. . . 若本規夫
レイチェル・ドーズ. . . 木下紗華
ルーシャス・フォックス. . . 阪脩
 
 
. . . とわかったのはここまで。
さて、まずは率直な感想から。声優陣による声の芝居、吹き替え用台本の出来など、総合的に判断してみて、やっぱり劇場公開版(DVD版)の吹き替えが現時点ではベストだなと思いました。
 
クリスチャン・ベールの声を担当した高橋広樹さんですが、確かに声質はイケメン俳優にピッタリだと思ったけど、声の芝居に関してはやはりDVD版の壇臣幸さんの方が上手いと感じました。ところどころで台詞に?な違和感を感じるところもありました(台本のせいもありますが)が、総合的にはまずまずといったところでしょうか。
 
マイケル・ケインの声を担当していたのは、岩崎ひろしさん。個人的には「少林サッカー」での情けないオヤジ役が印象深い方です。岩崎さんも独特の声質をお持ちの方ですが、今回に関してはそれが裏目に出てしまったようです。時折裏返し気味に高音になるその声質がマイケル・ケイン演じる執事アルフレッドには似合っていなかったと思います。元々アルフレッド自身が淡々と語るキャラクターなだけに、抑揚の激しい岩崎さんの芝居はちょっとキャラクターとあってなかったようです。
 
リーアム・ニーソンの声はベテランの若本規夫さんが演じています。ご存知「サザエさん」の穴子さんですね(笑)。最近では「人志松本のすべらない話」でのテンションの高いナレーションが印象的。そんな独特の若本節が魅力的でオイラも大好きな声優さんなのですが、その若本節が若干ラーズ・アル・グールのキャラとあってなかったような気がします。過去の佐々木勝彦さんや津嘉山正種さんが淡々と喋っていたのと比べればその差は一目瞭然です。個人的な印象ですが、吹き替えというより、ちょっとアニメよりな声の演技に感じました。
 
ゴードン本部長を演じるのはオイラの大好きな大塚芳忠さん。改めて大塚さんの芝居の上手さを感じました。そして忘れちゃいけない小川真司さん。小川さん、3種類目の吹き替え版にも登場です(笑)。金曜ロードショー版、そして今回の金曜プレミアム版とアール(ルトガー・ハウアー)を演じられた小川さんですが、やっぱりDVD版のアルフレッド(マイケル・ケイン)役が一番ぴったり!。燃えさかる柱の下敷きになったブルース・ウェインに対してはく台詞「こんな時のために腕立て伏せをやってたんじゃないんですか?」は名台詞です!。
 
 
さて、今回の吹き替え版を見ていて気になった点をいくつか。
今回の吹き替え用台本に於いて、ブルース・ウェインの台詞がいわゆる“タメ口”な事に非常に違和感を感じました。ウェイン産業のアールやルーシャス・フォックスに対する台詞、また執事アルフレッドに対する台詞など、目上の人間に対しての台詞が、ほとんどタメ口口調でした。
でも、それって違うと思うんだな。
確かに英語には日本語みたいに尊敬語や丁寧語がないにしても、礼節を重んじた台詞回しはあってしかるべきだと思う。ブルース・ウェインはプレイボーイ(を演じている)ではあるけれど、決して非礼な男ではありません。基本的には紳士です。でも、高橋さん演じるブルース・ウェインがタメ口で台詞を喋るたび、彼からは不遜なイメージを受けました。
例えば、自家用ジェット機内でのアルフレッドとのやりとり、アルフレッドの問いに対してのブルース・ウェインの返答. . .
 
「それ、レイチェルのこと?」(DVD版)
「レイチェルのことか?」(金曜プレミアム版)
 
文字にして一見すると大した差がないようにも見えますが、実際に台詞で聞くとその印象は大きく違います。言い方にもよりますが、DVD版が穏やかな受け答えなのに対し、金曜プレミアム版からは明らかな威圧感を感じました。いわゆる“上から目線”というヤツです。
思うに今回の吹き替え台本を書かれた方(翻訳:松崎広幸)はバットマンの原作を読まれたことがないのではないか?と想像します。確かにブルース・ウェインと執事アルフレッドは主従関係にありますから、そこだけ捉えるとタメ口でも全然問題ないのですが、この二人は主従関係であると同時に父子のような関係でもある訳です。ですからブルース・ウェインが執事とは言えアルフレッドに対して非礼な言動をする訳がないのです。そして、それは会社の上司であるアールに対してもルーシャス・フォックスに対しても同じです。ブルース・ウェインは金持ちのボンボン(を演じている)ではありますが、礼儀をわきまえている紳士なのです!。
研究所でタンブラー(バット・モービル)を試乗した時のルーシャス・フォックスとのやりとり. . .
 
「これ、黒はあるかな?」(DVD版)
「これの黒はあるか?」(金曜プレミアム版)
 
同じく、ブルースの事を死んだと思っていたと語るアールに対しての返答. . .
「がっかりしました?」(DVD版)
「がっかりしたか?」(金曜プレミアム版)
   
. . . どのケースも前者と後者では受ける印象が全然違います。明らかに後者の方が高飛車なイメージを表しており、それはブルース・ウェインというキャラクターを明確には表現しきれていません。今回の金曜プレミアム版の吹き替えに問題があったとすれば、まさにその点に尽きるでしょう。改めて日本語や翻訳の難しさを痛感した今回の新録吹き替え版でした。
 
おまけにもうひとつ。スケアクロウことジョナサン・クレイン。でも今回の吹き替え版では“クレーン”と呼ばれていました。クレインとクレーン. . . 実際の英語の発音はどちらが正しいのかわかりませんが、少なくともバットマンファンにはクレイン教授でとおってる筈なので、ここは「クレイン」と発音して欲しかったです。
 
「クレーン、クレーンって、工事現場じゃないんだから!」
. . . と憤慨するジョナサン・クレインさん(職業:悪党)
    スケアクロウ.jpg

 
さてさて、いよいよ公開となった「ダークナイト」
早く観たいぜ〜(^皿^)
. . . と思っていたら衝撃のニュースが!。
今回は「ダークナイト」日本語吹き替え版公開がないですって〜ッ!?
(この件に関しては次回へ続く)
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かいじゅうたちのはは

録画は裏?表?の『ザスーラ』
コチラも芳忠さん出演してたので(^ ^ヾ
by かいじゅうたちのはは (2008-08-10 19:58) 

堀越ヨッシー

かいじゅうたちのははさん、こんにちは。
「ザスーラ」(未見)ってことは、ティム・ロビンスの声ですか?。それもまた似合ってそうですね!(^皿^)b。
by 堀越ヨッシー (2008-08-11 17:50) 

かいじゅうたちのはは

そーなんですよ
あーんな声のパパが欲しいです
ダンナでもいいかな(問題発言?
by かいじゅうたちのはは (2008-08-12 10:30) 

吹き替え大好きパパ

はじめまして、堀越ヨッシーさん。
このブログを見て感動しました。こんなにも吹き替えに関心をもち、現在の吹き替えに不満を抱えてくれている方がいるなんて涙が止まりません。
一度会って、吹き替えや声優の演技について語りたいです。
突然失礼なお願いをしてもよろしいでしょうか。
ビギンズの初回放送を見ていないため、一度見てみたいのですがDVDやビデオを焼いてはいただけないでしょうか。お礼はできるかぎりのことをさせて頂きますので何卒宜しくお願いいたします。
はじめてのメールで本当に失礼とはございますが、いろんなバージョンがあるなら見てみたい、見比べてみたいという思いはわかっていただけると思います。
無理な相談だとは承知いたしておりますので、無理なら断ってください。ただ、吹き替えや声優に関するお話を一度させていただきたいので、お近づきにならせてください。宜しくお願いいたします。


by 吹き替え大好きパパ (2008-08-26 01:04) 

堀越ヨッシー

吹き替え大好きパパさん、はじめまして。
ご訪問&コメント、ありがとうございます!。
DVDの件ですが、残念ながらオイラのウチにはそのような高価なシステムはないのですよ〜(^皿^;)。ビンボー人なものですみませんです。我が家もハードディスクに録画→DVDに焼く...なんてシステムを早く導入したいもんであります(ウチではまだまだビデオが大活躍中!)。
「バットマン・ビギンズ」の吹き替え版ですが、日本テレビ版もフジテレビ版もそのうちまた放送されると思うので、それを楽しみに待つというのもテレビ吹き替えの楽しみ方のひとつと思います。
オイラはとにかく「ダークナイト」の吹き替え版を早く見たいです!(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2008-08-29 15:41) 

:

ジョナサン・クレイン/スケアクロウ:内田夕夜
ラーズ・アル・グール:てらそままさき
カーマイン・ファルコーニ:楠見尚己
リチャード・アール:小川真司

残りの方々、声はこちらで~す♪
自分的にはやっぱゴードンは組長(笑)一番です!では、
by : (2008-09-06 13:42) 

NO NAME

お前耳がおかしいのか?
壇臣幸がいいわけないだろ。
壇はバットマンの二重人格性を上手く演じてない。
バットマンとブルースはまったく性格が違うんだから声質ぐらいわけてほしい。
というわけでビギンズの吹き替えは金曜ロードショーのが一番いい。
クリスチャン・ベールのfixは小山力也だけどあいつも二重性を演じれるかどうかわからないし。
by NO NAME (2008-11-29 21:01) 

堀越ヨッシー

NO NAMEさん、はじめまして。
ご訪問&(辛口な)コメント、ありがとうございます。
確かに壇臣幸さんによるバットマンは、英語版のように声質は変えていませんね。それを良しとしないご意見もあちらこちらで耳にしたことがあります。ただそれで壇さんを攻撃するのはおかしい。壇さんは日本語吹き替えの演出家さんの意図でああいう芝居をしているはずですし、それは演じ分けが出来てない事とは違います。
オイラの場合、基本的に吹き替えは英語版のコピーではないと考えています。だから金曜ロードショーバージョンのように声質を変えるといったオリジナルに忠実な吹き替えがあってもいいし、またDVD版のような声質を変えない解釈の吹き替えバージョンがあってもいいと思うのです。どちらを楽しむかは受けて側の問題です。それがどれも嫌な人は字幕版を楽しめば良い訳です。NO NAMEさんはどうぞ金曜ロードショーバージョンを楽しんで下さい。オイラは壇さんのファンなので、DVD版を楽しみます。
 
それからもうひとつだけ。異論反論は大いに結構です。ただもう少し紳士的にお話しましょう。バットマンも言ってるじゃないですか...「本性は、行動に現れる」と。よろしくお願いします。
NO NAMEさんの意見を読みながら、改めて金曜ロードショー版吹き替えを見たくなってきました。「ダークナイト」DVD発売にあわせて、また日テレ放送してくれないかなー?(^皿^)。
by 堀越ヨッシー (2008-11-30 00:29) 

たおぷう

よっしーさん。はじめまして。
吹替えをこよなく愛する三十路の男でございます。
かなり前のログにコメントして恐縮です。
さて、なぜ「バットマンビギンズ」のログで初コメをしようかと
思ったかというと、まずひとえに作品が素晴らしいということです。
私は実はバットマン含めアメコミが大嫌いでした。
ビギンズをツタヤでレンタルしたのは、渡辺謙が出演しているからで
、どんなんかなと興味を持ったにすぎませんでした。
しかし、主演の吹替えが壇臣幸というのを知り、この吹替えは聞いて
みたいかなと思ったわけです。
結果は、大当たりで。いまではノーラン版バットマンを深く愛しております。
それを助長する要因はやはり吹替えの良さだったとも思います。

このブログはずっと見ておりました。実は私も吹替え映画のブログかHPを作ろうとずっと前に考えておりましたが、仕事に追われなかなか実現には至りません。しかしまさに私が感じたところのものをよっしーさんが言及してることで何か溜飲が下がったような気がします。
吹替える以上、日本語特有のもの、日本人が理解できる
ものへの意味合いの変換が必要になると思うからです。

わたしの気に入っているセリフですが、「ビギンズ」では、何度も
繰り返しでてくる「恐れるな」というもの。
これをブルースに伝える人物は二人いました。
一人は実父のトーマス。
もう一人は師匠のデュカードです。
DVDの吹替えではこの同じセリフをまったく意味の異なるものに
吹替えていました。
トーマスのセリフは「いいんだブルース。恐がらなくていい」というものに
なっております。
すごく優しい響きに感じました。
「恐れは自分の一部だから、受け入れて前に進みなさい」
そんな意味に私は思えました。
一方デュカードのほうは、そのまま
「恐れるなブルース」と訳されてますね。
作品を見たらおわかりになると思いますが、彼は悪党ではない
ように描かれてます。ブルースと同じで愛する人を理不尽な暴力で
奪われています。
彼にとっては「恐怖」とは自分自身の弱さでしかない、克服してなんぼという概念に聞こえます。
デュカードは訓練中にトーマスを無力だと批判します。
この考えの相違からみて、彼にはトーマスの考え方自体が
許せなかったのでしょう。
だからこそ、トーマスとは違う道を歩もうとしているブルースに
自分のほうが正しいということを教えたかったような気がします。

「ビギンズ」は、というよりこのシリーズは「父と子の物語」だと私は
思います。そして「ビギンズ」にはブルースにとって3人の父が登場し
ていると。
トーマス:理想の象徴
デュカード:厳しい現実、乗り越えるべき壁
そして、すべてを俯瞰して見つめ、必要なときに
手を差し伸べるアルフレッド。

こう考えると、ブルースは「ダークナイト」のデントよりも
出会った人たちに恵まれているなあと。

私がこういう考えに至るようになったのもやはり
壇さんや小川真司さんのような実力のある役者さんの
吹替えならびにいい翻訳のおかげであると思います。

よっしーさんはどう思われますか?

by たおぷう (2010-05-02 22:23) 

堀越ヨッシー

たおぷうさん、はじめまして(^皿^)。
ご訪問&コメント、ありがとうございます!。
 
なにより嬉しいのは、吹き替えをきっかけにアメコミを好きになって頂いた事です。アメコミは絵柄も含めて個性が強いものが多いので、なかなか日本ではウケないのですが、面白い作品も結構あるのでこれを機に是非好きになって頂けると幸いです。因みに映画「スパイダーマン」シリーズの吹き替えも絶品なので、機会があればご視聴されることをお薦めします!(^皿^)。
 
ご指摘の通り、「バットマン・ビギンズ」は親子、それも父と息子の関係が描かれている物語だと思います。オイラも思っていなかったおぷうさんの鋭い考察や着眼点に感服した次第です。
と同時に、吹き替え用脚本の重要性を再認識致しました。昔はそれほど意識しなかった(声優さんにばかり目がいっていた)演出だったり翻訳の部分ですが、吹き替えに於いて実はそこが一番重要だったりするのかな?と、最近は思い始めています。
 
その吹き替えに関する記事についてですが、オイラの独断と偏見でただただ好き勝手なことを書いて楽しんでいるのが正直なところです。でも、同じように吹き替えを愛する方々に記事を読んで楽しんで頂けたら、それは嬉しい限りです。たおぷうさんもお仕事がお忙しいとのことですが、是非吹き替えを盛り上げるHPなりブログなりを立ち上げてみては如何でしょうか?。カゲながら応援しております。
 
あと歳のせいか、字幕を読むのが疲れるのも正直なところです(^皿^;)


by 堀越ヨッシー (2010-05-04 09:36) 

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